高すぎない値段でM&Aを行うカギは「類似の会社・取引を参照すること」
M&Aの対象になっている会社のための「売買価格」の算定方法は上場公開されている会社の値段のつけかたと基本は変わりません。ここでも「将来キャッシュフローの割引現在価値」が企業価値算定の根本原則です。
上場している似たような会社のPERやEBITDA倍率を参照するという方法で「類似会社倍率(マルチプル)比準方式」と呼ばれます。M&A取引のデータの蓄積が進んでいる今日、過去の同業界、同規模のM&A案件で実際に支払われた買収金額とその対象会社の直前の利益・EBITDAから倍率を逆算して参照する「類似取引倍率(マルチプル)比準」というやり方もあり、これを用いれば「支配権プレミアム」の相場感をつかむことができます。
ケーススタディ:非上場の食品会社の価格算定式
非上場の食品会社X社を買収したいので価格を算定してくれ、と依頼されたとしましょう。簡単な試算として必要な情報は4つだけです。
1.営業利益はどれぐらい毎年ありますか?→15億円
2.工場設備やシステム投資の減価償却は?→5億円
3.銀行からの借金はいくら残ってますか?→75億円
4.不動産の含み益や余剰の現預金・有価証券は?→30億円
会社四季報(最近だとSPEEDAなどの有料データベース)で似たような事業内容(欲を言えば規模や収益力も同じぐらい)の上場会社を検索して、その平均EBITDA倍率が7倍だとします。
X社は非上場で規模も小さめなので30%ほどディスカウントして5倍、とすれば
X社株式価値=企業価値-ネット有利子負債
=EBITDA(15+5)×5倍-(75-30)
=55億円
と暗算で計算できます。
意外にシンプルな評価方法ですが、相場感覚を持つという意味でこの価格算定結果は役立ちますし、かなり多くの場合売主の創業社長の感覚とマッチしていて「やっぱりそんなもんかね」という反応が返ってくるものです。
森生 明
グロービス経営大学院
講師
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