(※写真はイメージです/PIXTA)

企業の価値を創造するのは経営者であり、その経営者を評価・選別するのが投資家です。しかし、「短期的な利益を追う投資家に会社の経営を正しく評価できるわけがない」と考える経営者も存在します。このような意見があるなかで、なぜ投資家が会社を評価・選別する仕組みが重視されるのでしょうか。社会に価値を生む会社を選ぶために、どのような仕組みを整えればよいのかを解説します。本記事では、森生明氏の著書『会社の値段[新版]』(筑摩書房)より一部を抜粋・編集してお届けします。

企業の価値=経営者の評価。経営者を選ぶのは株主である投資家

企業価値を創造するのは、たしかに企業活動に参加するすべての人たちですが、それぞれ対立するステークホルダー間の利害をバランスよく調整し、ベクトルをそろえて企業の持てる力を最大限に引き出すのは、経営者の仕事です。

 

言い方を変えれば、株主という投資家が会社のリーダーとしてふさわしい経営者を選ぶことによって企業価値は創造されたり、逆だと破壊されたりするのです。

 

そして投資家が企業価値を創造する経営者を正しく選び、経営の実践をサポートし監視監督する体制を作る活動がコーポレートガバナンス(企業統治)であり、経営者を交代させる活動がM&Aという経営支配権の売買取引です。

 

リスクを背負い、厳しい決断をひとつひとつ下して、結果責任を取る。この役割を担っている組織のトップが企業価値の創造者だ、という事実は厳粛に受け止める必要があります。

 

その認識が甘いと、とんでもない結果が出た場合、誰も責任を取らない雰囲気が組織に蔓延します。近年、急に目立つようになった企業不祥事も、人の命を預かる製品を作っている会社が引き起こす製品不良や大事故のニュースも、これらを目にするたびにその会社の経営者は結果責任を取る覚悟で日頃からひとつひとつの大切な決断を行っていたのか、とはなはだ疑問に感じられます。

 

そういうことが起こると、経営トップが記者会見の席で深々と頭を下げ陳謝し、その後に職を辞任するのが常ですが、このような経営者が企業価値にどれほどのマイナスをもたらすかは計り知れません。

やましい事情がある経営者ほど、株主至上主義を否定する

企業価値の算定は経営の質を判断する基準であり、株価は経営者への通知表です。これが、米国が紆余曲折を経ながら作り上げてきた資本主義の根底を支える基盤です。

 

この基本ルールに対して、「マネーゲーム的な短期視点の投機家に経営の質が正しく評価できるわけがない」「そんな株主に経営を振り回されるとろくなことにはならない」という批判的な声は、いまだに日本には根強くあります。

 

この主張をするのは経営者としての評価を投資家株主にされると自分の身が危うくなる現経営陣である場合が多いのですが、それらの経営者は「会社はすべてのステークホルダーのものだ」と主張し、取引先やメインバンク銀行グループと株の持ち合いによる安定株主工作に積極的だったり、株主優待制度を通じて株価評価と関係なく議決権を行使する個人株主を増やすことだったりに熱心になります。

 

 

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※本連載は、森生明氏の著書『会社の値段[新版]』(筑摩書房)より一部を抜粋・再編集したものです。

会社の値段[新版]

会社の値段[新版]

森生 明

筑摩書房

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