お金と時間はあるのに…早期退職後に陥った「人生の目的喪失」
退職後、しばらくは趣味の山登りや釣りを楽しみながら過ごしていましたが、1年ほど経ったころ、知人の紹介で一度再就職する機会がありました。周囲からも「羨ましい」といわれる待遇でしたが、長くは続きませんでした。
「うまく言葉にできないのですが、しっくりこなかったんです」
やりがいのある仕事や世の中に役立つ仕事への漠然とした憧れはあるものの、具体的に何がしたいのかはわからない。お金の使い道もわからない。これからどう生きていけばいいのかもわからない。何もかもが漠然としている状態だったというKさん。
退職から4年。唯一、明確に楽しめていたのが資産運用でした。日々の値動きを追い、情報を集め、自分なりに考える時間だけは没頭できたといいます。
「時間はある。お金もある。でも、何にお金を使えばいいのかわからず、毎日が退屈すぎるんです。経済的には満たされているはずなのに、このまま何のために生きるのかと考えると、ふと絶望に近い感情に襲われるんです」
これは「お金が足りない不安」ではありません。むしろ逆で、「大きな失敗をしなくても生きていける状態」になったことで、支出の基準が見えなくなってしまっていたのです。
【CFPが解説】人生後半で必要になる「支出のリバランス」
Kさんのように、資産形成に成功したものの「お金の使い道がわからずモヤモヤする」というケースは、人生後半において少なくありません。
現役時代は「住宅ローン」「教育費」「老後資金の貯蓄」など、「将来のために残す支出」が中心になります。一方、人生後半では「健康維持」「住まい」「介護への備え」「趣味や生きがい」「新しい挑戦」など、“人生を維持し豊かにする支出”の比重が高まっていきます。
つまり、ここで必要になるのは、単なる節約ではなく「支出の再設計(リバランス)」です。
