(※写真はイメージです/PIXTA)

親の他界に伴い、約8,000万円もの財産を受け継ぐことになったアキラさん(仮名・55歳)。生活が落ち着いたころ、世間の投資ブームを受けて「預金のまま放置していいのか」と資産運用への焦りを募らせますが、親が残したお金を前に複雑な葛藤を抱えることになります。本記事では、大金を相続した50代夫婦が直面する悩みと、人生後半に必要な「支出のリバランス」について、CFPの京極佐和野氏が解説します。

8,000万円を相続も、資産形成を考える余裕もない「慌ただしい1年間」

アキラさん(仮名・55歳)と妻のナオミさん(仮名・54歳)は、少し前に大きな環境の変化を経験しました。

 

アキラさんの父親が亡くなった際に母親が財産を相続し、その後、母親も他界したことで、アキラさん夫婦は実家の売却や相続税の納付などを経て、最終的に約8,000万円もの財産を受け継ぐことになりました。

 

しかし、多額の財産を相続したからといって、すぐに資産運用を考えられるわけではありませんでした。

 

相続からの1年間は、ひたすら慌ただしい時間を過ごしました。複雑な相続手続きに始まり、お墓のことや、長く誰も住まなくなった実家の片付けなど、やるべきことは山積みでした。さらに、アキラさんはちょうど新しい職場へ転職したばかりの時期でもありました。新しい仕事に慣れることに精一杯で、休日は実家の整理や各種手続きに追われる日々が続きました。

 

相続した土地は無事に売却し、現金化して実家近くの金融機関の口座に預けていましたが、具体的な資産運用について考える余裕はありませんでした。アキラさんは「気がつけば1年が過ぎていました」と当時を振り返ります。

投資ブームと親への思いの狭間で葛藤

生活がようやく落ち着き始めたころ、日経平均株価の上昇や新NISAの話題を目にする機会が増えてきました。

 

「預金のまま放置しておいていいのだろうか」「新NISA、やらないと……」といった焦りが、アキラさんの頭をよぎるようになりました。

 

ただ、資産運用への思いとは別に、強い気持ちがありました。両親は決して贅沢をするような人たちではなく、一生懸命働いて残してくれた大切なお金です。だからこそ簡単には使えず、できれば自分たちの子どもにもしっかりと引き継いであげたいという気持ちがありました。

 

しかし現実問題として、自分たちの老後生活にも備えなければなりません。アキラさんの心のなかには、親への感謝と、お金を管理する責任感が入り混じった複雑な気持ちがありました。

 

当初、アキラさんの関心は「どのような方法で資産運用をすべきか」という点に向いていましたが、夫婦で話し合いを進めるうちに、次々と別の話題が浮上してきます。

 

「今から住宅を購入するのはどうだろうか」

「元気なうちに旅行にも行きたい」

「趣味にも少しお金を使いたいと思っている」

「でも、子どもたちにも残してあげたい」

 

アキラさん夫婦が話し合いを通じて気づいたのは、本当に知りたいのは運用方法ではなく、「これからの人生にお金をどう使うか」ということでした。

 

相続したまとまったお金があるからこそ、使いたい、残したい、備えたいという複数の思いが同時に生まれて葛藤していたのです。

 

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