堅実な生活と投資の成功で、約9,800万円もの資産を築いたKさん(55歳・男性)。51歳で早期退職を果たし、経済的な不安とは無縁のリタイア生活を送っているように見えます。しかし、彼の心は晴れませんでした。お金も時間も十分にあるにもかかわらず、「何にお金を使えばいいのかわからない」「毎日が退屈すぎる」と、生きる目的を見失い絶望に近い感情を抱えていたのです。資産形成に成功したシニアを待ち受ける「お金が使えない」という思わぬ悩みと、人生後半を豊かにするための「支出の再設計」について、CFPの京極佐和野氏が解説します。
〈資産9,800万円〉早期退職した55歳独身男性の「将来への迷い」
製造業の技術職として長年勤めた会社を早期退職した、独身のKさん(55歳・男性)。現在の資産は約9,800万円にのぼり、大台である1億円の到達も目前に控えています。
しかし、老後資金の不安は少ないはずのKさんには、ある悩みがありました。
「何にお金を使えばいいのかがわからない。資産形成には成功しているにもかかわらず、将来への迷いが消えないんです」
Kさんの現役時代の年収は、最終的に約800万円でした。特別な資産形成の戦略があったわけではなく、老後への強い危機感があったわけでもありません。ただ、やっていたことはシンプルでした。
「ここまで増えるとは…」市場の時流を契機に資産倍増
住まいは賃貸の1LDK。車は新車を現金で購入するものの、買い替えは10年以上乗り続けてから。特に散財することもなく、余ったお金はそのまま預金口座に積み上がっていきました。
「節約していたというより、元々ほしいものがそんなになかった。山登りと釣りさえできれば十分でした」
投資は、退職するまで一切していませんでした。50歳には現金が約5,000万円に到達していましたが、運用には踏み出していなかったのです。
転機になったのは、早期退職を意識し始めた頃です。日経平均の上昇基調を目にしたことをきっかけに、「今から運用すれば、資産をさらに増やしていけるのではないか」と考え、51歳で早期退職。
このとき支給された割増退職金も元本に加え、全世界株式インデックスファンドを中心に運用を開始したところ、世界株式市場の追い風にも乗って、資産は約9,800万円まで増えました。
「正直、ここまで増えるとは思っていませんでした。時流に乗ったって感じでしょうか」
FPオフィスミラボ代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士/CFP®/キャリアコンサルタント
「収入はあるのに将来が不安」「何から見直せばよいか分からない」——そんな50代の悩みに対し、お金と働き方の両面から人生後半の再設計を支援するファイナンシャルプランナー。
保険の現場で多くの人生の転機に向き合う中で、「お金の多寡ではなく、価値観と選択が人生を左右する」という本質にたどり着く。
現在は、家計の見直しや支出のリバランス、働き方の再設計を含めたライフプラン支援を行う。感情(気持ち)と勘定(数字)の両面を整え、“わたし仕様の選択”ができるよう寄り添い、必要なときに相談できる距離感を大切にしたスタイルに定評がある。
J-FLEC認定アドバイザー、JASSOスカラシップ・アドバイザーとしても活動。企業顧問として、従業員のライフプランや家計支援に加え、人生後半を見据えた働き方やキャリアの再設計にも関わるほか、企業・団体での研修・セミナー登壇、個別相談に対応。
ホームページ:https://fp-milabo.com/
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連載【CFP監修】感情と勘定を整えてリスタートする「50代からの人生」