「貯金はあるだろ」…定年後、夫が初めて見た家計の現実
修一さん(仮名・65歳)は、長年勤めた会社を定年退職しました。
退職時点の貯金は約4,800万円。住宅ローンは完済済み。妻の紀子さん(仮名・63歳)は、長年家計を管理してきました。
修一さんは、退職後の生活についてあまり深刻に考えていませんでした。
「これだけ貯金があるなら、少しは好きに使えるだろう」
そう思っていたのです。しかし、退職後に紀子さんから言われた小遣い額は、月3万円でした。
「え、冗談だろ?」
修一さんは思わずそう口にしました。
現役時代は、昼食代や飲み会代を含めて月5万円以上使うことも珍しくありませんでした。退職後は時間もできるため、趣味の釣りやゴルフ、友人との外食を楽しみたいと考えていました。
ところが紀子さんは、リビングのテーブルに数枚の書類を広げました。そこには、年金見込み額、毎月の生活費、固定資産税、医療費、車の維持費、将来の住宅修繕費が細かく書かれていました。
「これを見ても、まだ自由に使えると思う?」
修一さんは、初めて家計表をじっくり見ました。
食費、光熱費、通信費、保険料、税金、医療費。ローンがなくても、生活費は毎月確実にかかります。さらに、築30年を超える自宅には、今後、外壁や給湯器、水回りの修繕も必要になる見込みでした。
総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では、可処分所得が月22万1,544円である一方、消費支出は月26万3,979円となっており、平均では毎月赤字です。多くの高齢世帯は、年金だけでなく貯蓄を取り崩しながら生活しています。
「貯金4,800万円」という数字は大きく見えます。
しかし、老後が20年、30年続く可能性を考えれば、無計画に使えるお金ではありませんでした。
