「困った時は支えたい」…60代夫婦が始めた息子との再同居
隆さん(仮名・67歳)と妻の洋子さん(仮名・65歳)は、1年前から長男・秀治さん(仮名・38歳)との同居を始めました。
秀治さんは都内の会社で働いていましたが、勤務先の業績悪化で収入が減少。さらに離婚が重なり、家賃負担が厳しくなったといいます。
「しばらく実家に戻りたい」
そう相談を受けたとき、隆さんは迷いませんでした。
「家族なんだから、困った時はお互いさまだろ」
夫婦の年金収入は月27万円ほど。退職金などを含めた貯蓄は約3,000万円あり、住宅ローンも完済していました。
「二人だけなら、この先も何とか暮らしていけると思っていました」
洋子さんはそう振り返ります。
久しぶりの親子同居に、最初はどこか懐かしさもあったといいます。
夕食を三人で囲み、テレビを見ながら会話をする。息子が家にいることで、防犯面の安心感もありました。
「老後って、もっと静かなものだと思っていたから、にぎやかになって嬉しかったんです」
しかし、その空気は少しずつ変わっていきました。
最初に気になったのは、生活リズムでした。秀治さんは夜遅くまで起きており、休日は昼近くまで寝ています。一方、隆さん夫婦は早寝早起きです。
さらに、食事や洗濯、風呂の使い方など、小さなズレが積み重なっていきました。
「なんでこんなに電気つけっぱなしなの?」
「いちいち細かいなあ…」
軽い言い合いは、徐々に増えていったといいます。
内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、65歳以上の者のいる世帯のうち「親と未婚の子のみの世帯」は20.2%。親子同居そのものは珍しい形ではありませんが、長期間別々に暮らした後の再同居では、生活習慣や価値観の違いが表面化しやすい側面もあります。
それでも、夫婦は「そのうち落ち着くだろう」と考えていました。しかし、問題は次第に“息子”ではなく、“夫婦関係”へ広がっていったのです。
