確信に変わった認識の魔力
認識が生まれる背景はさまざまです。過去に受けた強烈な印象が原因になることもあれば、日常生活のなかで何度も繰り返し偏った情報に触れたりすることで形成されていくケースもあります。
ダイヤモンドの例が示すように、企業は戦略的なコミュニケーションによって、消費者に新たな認識を伝えることもできます。つまり、消費者の認識を意図的に変えることで、停滞した商品に新しい価値を吹き込むことも可能だということです。筆者がその可能性を強く実感したのが、あるグラノーラブランドの再生プロジェクトでした。
当時の市場では、シリアル食品全体に対して消費者はネガティブな認識を持っていました。「子どもの朝食」「手抜きの代名詞」といったイメージがあり、発売から20年を過ぎて売上が伸び悩んでいました。実際、製造ラインは複数あるうちの1本のみ、しかも半日だけ稼働している状況でした。当時のクライアントの要望は「製造ラインを毎日フル稼働させたい」という切実なものでした。
商品そのものは、栄養バランスに優れ、食物繊維や鉄分を豊富に含み、ドライフルーツとナッツの自然な甘みを持つ優れたものです。それでも売れなかったのは、グラノーラブランドが属するシリアル食品に対するネガティブな認識が、消費者の購買意欲を妨げていたからです。
そこで私たちは、グラノーラブランドの置かれている状況を変えるために、グラノーラとシリアルは別物という、グラノーラブランドに対する認識を更新してもらう戦略を立てました。そこで注目したのがヨーグルトです。高い頻度で朝食に上がるメニューをいくつか挙げるなかで、際立っていたのがヨーグルトでした。
それまでのシリアルブランド各社は、朝食はパンかごはんかシリアルという選択を消費者に提案していました。こうしたマーケティング活動を数十年継続した結果、シリアル食品を選択している人は1割程度でした。このような背景から、そもそもビジネスの土俵(戦う場所)を変えないと売上を伸ばすことができないと考えました。だからこそ、グラノーラブランドと従来のシリアルを同じようなものという認識のままでは売上を伸ばすことはできないと考えました。
そこで、選んだ戦略が「ヨーグルトの友達」になることでした。「ヨーグルトの友達」になることで、今までのシリアルとはちょっと違う、「シリアルの友達」ではない、という認識に更新することを狙ったのです。
その後、「朝活」ブームを背景に、「第三の朝食」「朝食革命」といった社会トレンドに呼応したブランドの姿勢を打ち出し、フルーツグラノーラをシリアルブランドではなく「朝食ブランド」の文脈で語るようにしました。これによってフルーツグラノーラブランドを、シリアル食品よりももう一段上の朝食の選択肢と位置づけたのです。
この戦略は見事に成功しました。2012年のテレビ特集をきっかけに売上は急拡大し、工場の稼働率は一気に上昇。プロジェクト開始時の売上は三十数億円でしたが、最盛期には年間売上約300億円へと成長し、製造ラインも増設されました。フルーツグラノーラは「パンとごはんに次ぐ第三の朝食」として、従来のシリアル食品と異なる地位を確立したのです。注目すべきは、商品の中身が一切変わっていないという点です。変えたのは、消費者の認識だけでした。
この経験を通じて、筆者は認識転換に対して確信を深めました。そして、この認識を再設計することこそが、停滞したブランドや事業を再生させることができる一手だと考えるようになりました。
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