話が違うぞ…元小学校教員(62)、「退職金で住宅ローン完済」のはずが〈残債1,200万円〉の現実。「退職金減額」と「金利上昇」で崩れ去った老後計画【CFPが解説】

話が違うぞ…元小学校教員(62)、「退職金で住宅ローン完済」のはずが〈残債1,200万円〉の現実。「退職金減額」と「金利上昇」で崩れ去った老後計画【CFPが解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

定年退職を迎え、退職金で住宅ローンを一括返済し、夫婦でのんびりセカンドライフを過ごす。そんな日本人の多くが描く「老後の理想図」が今、度重なる制度変更と金利上昇によって崩れ去ろうとしています。とくに、学校の教員や警察官などの「公務員」として真面目に働いてきた50~60代が、皮算用とのギャップに苦しむケースが増えています。42歳のときに変動金利でローンを組んだ元小学校教員の事例をもとに、現役世代が陥りがちな老後設計の誤算と、そこから抜け出すための対処法をCFPの下田幸彦氏が解説します。

CFPが指摘する「3つの判断ミス」と絶対にやってはいけない“一発逆転”

Sさんのお気持ちは痛いほどわかります。しかし、CFPの客観的な視点で分析すると、今回の事態は「起こるべくして起きた」といわざるを得ません。

 

その要因は以下の3つです。

 

  1. 20年後という遠い将来の収入見込み(退職金の額)を甘く見積もりすぎたこと
  2. 当時の低金利とデフレ状況が「ずっと続く」という前提で計画を立てたこと
  3. 売り手側(銀行、住宅営業マン)の都合のいいポジショントークを鵜呑みにしたこと

 

毎日、目の前の仕事に全力で追われていれば、20年後の退職金制度の改正や世界の経済動向まで頭が回らないのは無理もありません。

 

しかし、ここで最も危険なのは、Sさんが現状を悲観し「減った退職金を取り戻すために、話題の投資に全額突っ込んで一発逆転しよう」と焦ってしまうことです。

 

基礎知識がないまま焦りや恐怖から行う投資は、大切な老後資金をさらに減らす最悪の結果を招きます。

老後の主導権を取り戻すための「守りの資産設計」3ステップ

では、Sさんのような時間差ダブルパンチに直面した場合、どうすればいいのでしょうか。

 

ここでは以下の3つのステップで「守りの資産設計」を立て直すことをおすすめします。

 

1. 現状の「リアルな数字」でライフプランを作り直す

まずは「退職金で一括返済すべきか否か」という極端な思考を捨てます。現在の正確なローン残債、手元の全資産、今後の年金見込額を並べ、資産状況がこれからどう変化していくのかを、詳細なライフプラン表として可視化することから始めます。

 

2. 「繰り上げ返済」と「長期投資(NISA等)」のバランスを比較する

金利が上がったからといって、慌てて全額繰り上げ返済し、手元の現金を手放すのが正解とは限りません。住宅ローンの金利負担と、手元資金の一部をNISAなどで手堅く長期運用した場合の想定利回りを冷静に比較し、「一部だけ繰り上げ返済し、残りは手堅く運用に回す」といった、リスクのバランスを取った選択肢を探ります。

 

3. 「働くストレス」と「お金の安心」の最適解を見つける

生活費のためだけに、嫌々フルタイムの再任用で働き続けるのは心身ともに限界がきます。しかし、ライフプランをじっくりと作り直すことで、「週に3日だけ、無理のない範囲でパートとして働けば、運用益と合わせて家計は十分に回る」という新しい選択肢が見えてくることも多いのです。

 

毎日真面目に社会のために働き続けてきた人が、知識のギャップや制度変更ゆえに、定年後にお金の不安に怯えなければならないのはあまりにも理不尽です。

 

もし「我が家のローンや退職金は大丈夫だろうか」と不安を感じたなら、極端な行動に出る前に、まずは冷静に現状の数字を整理してみてください。

 

自分だけの「守りの資産設計図」を描き直すことこそが、老後の不安から解放され、人生の主導権を取り戻すための確実な一歩となるはずです。

 

 

下田 幸彦

青い森FP事務所

代表/CFP®

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