スマートだった夫の「死角」
「主人ががんで亡くなりましたので、メルマガを解除してほしい」
ある日、私の元に一通のメールが届きました。送り主は、かつて私の資産形成セミナーに参加し、二人三脚で将来のプランを立ててきたKさん(当時30代後半)と同年代の奥様でした。
KさんはITリテラシーが高く、非常にスマートな方でした。職場の人間関係に悩みつつも、自営業を営む奥様の将来を案じ、「自分たちの老後は自分たちで守る」と、ネット証券での米国株投資や、ルールに基づいたFXトレードを熱心に実践していたのです。
実際に、Kさんの投資は見事なものでした。当時300万円で始めた米国株投資は年利10%程度で堅実に運用し、さらに100万円を原資に始めたFXは、毎月の利益に波はあるものの月平均5万円ほどの利益を出していました。
「妻にも伝えておきます」という言葉の裏で
Kさんの投資は順調でした。私は折に触れ、「資産状況はご夫婦で共有し、共通認識を持ってくださいね」と伝えていました。Kさんも「わかりました、妻にも伝えておきます」と答えてくれました。
しかし、その「共有」は、遺された奥様にとっては十分なものではなかったのです。
Kさんの死後、奥様のご自宅を訪問した私を待っていたのは、憔悴しきった姿と「デジタル遺産の壁」に直面する家族の姿だったのです。
Kさんは奥様に「投資をしている」とは伝えていましたが、どの金融機関に口座があり、何にいくら投資しているかという詳細は伏せたままだったのです。スマホのロックを解除しても、アプリを開くIDやパスワードがわからない。
奥様は、K様が取引していたであろう金融機関を一つひとつ探し出し、慣れない相続手続きを開始しました。
しかし、そこでさらなる「地獄」が待ち受けていました。
