エンダウメント効果とは?
資本主義ゲームに勝つには、人間の心理を理解しなければならない。人間は、自分の想像よりも非合理な判断をしてしまいがちな生き物なのだ。
行動経済学は「人間の意思決定は必ずしも合理的ではない」ことを教えてくれる経済学の一分野である。経済学者のリチャード・セーラーや、前述の心理学者のダニエル・カーネマンらが先駆者として知られている。
そのなかで、プロスペクト理論とあわせて覚えておきたい概念が「エンダウメント効果」だ。エンダウメント効果とは、「自分の所有物など、思い入れのあるものは客観的な価値より高く見積もってしまう傾向」のことを指す。
ダニエル・カーネマンによる次の実験が有名だ。大学生を2つのグループに分け、片方のグループにだけ6ドル相当のマグカップをプレゼントした。そして、プレゼントされなかったグループに同じマグカップを「いくらなら買うか?」と質問し、プレゼントされたグループには「いくらなら手放すか」と質問したところ、前者は2.87ドルだったのに対し、後者は7.12ドルと2倍以上の差があったのである。
つまり、同じマグカップであったとしても、一度自分の所有物になると、愛着が生まれるエンダウメント効果によって、客観的評価ができなくなるのである。
人は、思い入れのあるものほど高く見積もってしまう
エンダウメント効果は、対象が「お金」でも起こりうる。たとえば、母親が死ぬ間際に「もしものときに使って」と言って、100万円を渡してくれたとする。あなたは母親の遺言を守って、そのお金には手をつけない。その感情は容易に想像できるだろう。
その後、あなたは重い病気にかかり、その100万円を医療費に使ったとしよう。あなたにとっては100万円以上の価値のあるとても大切なお金かもしれないが、病院や医師などの他人にとってはただの100万円である。それ以上でもそれ以下の価値でもない。より手厚い医療が受けられるわけでもないし、手術の成功率が上がるわけでもないのだ。
そのことは頭でわかっていても、多くの人は「感情」や「常識」や「倫理観」に左右されて、正確な価値判断ができなくなってしまうのである。思い入れがあるだけで、市場で価値のないものに、特別な価値があると思い込んでしまうのが人間なのだ。

