原油100ドル時代突入…原油高で「安全資産」金に陰りも、利下げ期待で「5,000ドルシナリオ」維持なるか【5月の金市場】
(※画像はイメージです/PIXTA)
2026年5月の金市場は、イラン紛争による原油高と、揺れ動く利下げ観測が交錯するなかで、方向感のつかみにくい展開となりました。原油価格が100ドル前後で高止まりすれば金の上値は重くなる一方、和平進展や利下げ期待が強まれば、金は再び5,000ドル台を試す可能性があります。投資家心理は慎重ながらも押し目買いは根強く、中国の現物需要や中央銀行の金購入、さらに財政悪化と債務膨張といった構造要因が金市場を下支えしています。本稿では、5月の金価格を左右する主要テーマを整理します。なお、本稿はステート・ストリート・インベストメント・マネジメントの4名のストラテジストによる共同執筆です。
財政が不確実な局面における政策ヘッジ手段としての金
悪化する米財政と債務コスト…金が有力な防波堤に
米議会予算局(CBO)によれば、世界金融危機(GFC)以前の2000〜2007年の米国財政赤字は、対GDP比で平均約1%でした※23。GFC後の2010〜2019年は平均約5%へと拡大しましたが※24、新型コロナ禍後の2021〜2025年には約7%まで広がり、構造的な財政赤字はこの間に約600bp悪化しています※25。
投資家にとって、平均的な米国債利回りが上昇するなかでより高水準の借り入れが続くことは、債務返済コストを複利的に押し上げる要因となります。すなわち、金利上昇によって利払い費が増加し、追加的な国債発行が必要になる悪循環が生まれます。
金は、現在の債務依存型の債務調達サイクルが持続する可能性に対して強力なヘッジ手段になる可能性があります。
政策不透明感と金利上昇で金の存在感が強まる
1992年以来、最も票が割れた米連邦公開市場委員会(FOMC)での投票結果に加え、タカ派寄りとみられるケビン・ウォーシュ氏が次期FRB議長として承認されたことで、金融政策を巡る不確実性はかつてなく高まっています。
この不確実性に加え、市場がより小幅な利下げサイクル、あるいはFRBがより長期間にわたり政策金利を据え置くことで、資本市場は増加する米国債の供給を吸収するためにより高い利回りを要求する可能性があります。
長期ゾーンの金利が構造的な見直しを迫られる場合は、デュレーションが歴史的に果たしてきた分散効果は縮小します。インフレが主導する局面では債券が株式の下落を相殺できず、株式60/債券40ポートフォリオはこの10年間、十分な成果を上げられませんでした※26。
デュレーションが安全な避難先ではなくリスクの源泉となる世界では、ポートフォリオを補完する資産としての金の役割は、単なる戦術的なヘッジ手段ではなく、より戦略的手段になる可能性があります。
財政赤字の上振れ懸念…金市場は警戒強める
CBOの最新のベースライン予測は毎回、過去の見通しよりも一貫して高い出発点から始まっており、実際の財政赤字が想定を上振れしやすい傾向を示しています。2026年2月時点のベースラインは直近のオイルショックを織り込んでおらず、最高裁で無効とされた関税関連の収入を除外しており、イラン戦争に伴う推定250億ドルの費用も含まれていません※27。
ウクライナに約束した防衛支援は高止まりしており、予測されたベースラインはあくまで下限と考えるべきです。市場、特に金市場は、実際の財政支出がこれらの予測を上回る結果となる可能性を徐々に織り込んでいるものと考えられます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご留意事項】をご参照ください。
Aakash Doshi(Head of Gold Strategy)、Mohanad Abukhalaf (Gold Strategist)、Diego Andrade(Senior Gold Strategist)、アーロン・チャン(ゴールド・ストラテジスト)
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ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントは、約半世紀にわたり、機関投資家、金融プロフェッショナル、そして個人投資家に、より良い成果をもたらしてきた。
インデックス運用やETF(上場投資信託)分野における早期からの取り組みを含め、同社の投資手法は、市場に裏付けられた運用ノウハウと、投資家ニーズへの継続的な対応を基盤としている。
2025年6月末時点において、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントが関与する運用資産残高は5兆米ドルを超えており、60カ国以上の顧客に対してサービスを展開している。その中には、グローバル規模での戦略的パートナーシップを通じた提供も含まれ、コスト効率に優れた幅広い投資手段を提供している。ETFの運用資産総額1兆6,898.3億米ドルを含み、そのうち約1,160.5億米ドルは、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ・ファンズ・ディストリビューターズ・エルエルシー(「SSGA FD」)がマーケティング・エージェントを行っているSPDRの金の資産となっている。SSGA FDはSSGAの関連会社で、すべての運用資産残高は監査前の数値。
なお、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントは、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社が行う資産運用関連業務のブランド名である。
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本稿に示されている見解は2026年5月1日時点のSPDRゴールド戦略チームの見解であり、市場やその他の状況によって変わる場合があります。本資料には、将来の見通しと見なされる可能性のある記述が一部含まれています。その様な記述は、将来のパフォーマンスを保証するものではなく、実際の結果や展開はこれら予想とは大きく異なる場合がある点にご注意ください。
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〈注記〉
※1 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 04/30/2026
※2 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 04/30/2026
※3 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 04/30/2026
※4 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 04/30/2026
※5 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 04/30/2026
※6 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 04/30/2026
※7 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 04/30/2026
※8 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 04/30/2026
※9 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 04/30/2026
※10 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 04/30/2026
※11 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 04/30/2026
※12 Source: International Energy Agency, as of 04/14/2026
※13 Source: International Energy Agency, as of 04/14/2026
※14 Source: International Energy Agency, as of 04/14/2026
※15 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 04/30/2026
※16 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 04/30/2026
※17 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 04/30/2026
※18 Source: IIF, State Street Investment Management, as of 03/31/2026
※19 Source: CBO, as of 02/28/2026
※20 Source: Bloomberg Financial L.P., as of 04/30/2026
※21 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 04/30/2026
※22 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 04/30/2026
※23 Source: Street Investment Management, Congressional Budget Office (CBO), as of 05/01/2026. Note: CBO - The Long-Term Budget Outlook Data: 2026 to 2056 was published on February 25, 2026
※24 Source: State Street Investment Management, Congressional Budget Office (CBO), as of 05/01/2026. Note: CBO - The Long-Term Budget Outlook Data: 2026 to 2056 was published on February 25, 2026
※25 Source: State Street Investment Management, Congressional Budget Office (CBO), as of 05/01/2026. Note: CBO - The Long-Term Budget Outlook Data: 2026 to 2056 was published on February 25, 2026
※26 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 05/01/2026
※27 Source: Bloomberg Financial L.P., State Street Investment Management, as of 05/01/2026
〈出所〉
★1 出所:ブルームバーグ・フィナンシャルL.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、2026年4月30日時点。注:20分間隔のデータ。欠測値については、直近の価格データを用いて補完しています。記載されているパフォーマンスデータは過去のパフォーマンスです。過去のパフォーマンスは将来の結果を保証するものではありません。
★2 出所:ブルームバーグ・フィナンシャルL.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント。2026年4月30日時点。注:30日間の実現ボラティリティは年率化しています。 記載されているパフォーマンスデータは過去のパフォーマンスです。過去のパフォーマンスは将来の結果を保証するものではありません。
★3 出所:ブルームバーグ・フィナンシャルL.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、米議会予算局(CBO)、2026年5月1日時点。注:CBO-長期予算見通し:2026〜2056年、2026年2月25日発行。記載されているパフォーマンスデータは過去のパフォーマンスです。過去のパフォーマンスは将来の結果を保証するものではありません。
〈用語集〉
中央銀行:一つの国または国家連合で用いられる通貨と信用の創造と分配を独立性を持って管理する金融機関。
COMEX:コモディティ(主に金、銀、銅、アルミニウム)の先物を取引する市場
金のスポット価格:スポット市場における金の価格。国際的通貨コード「XAU」で表記される、1トロイオンス当たりの金価格。米ドル建て。
実質金利:インフレ調整後の金利。物価上昇の影響を取り除くことで、真の借入れコストおよび投資による実際の利回りを反映します。
ICEブレント:インターコンチネンタル取引所(ICE)で取引されるブレント原油先物で、国際的に取引される原油の主要なベンチマーク価格の一つです。
レフトテール・ヘッジ:株式急落、政策ショック、通貨の不安定化など、極端に悪い市場結果(下振れ)からポートフォリオを守るためのポジション。金は、市場全体におよぶストレス局面における過去のパフォーマンスから、レフトテール・ヘッジとして位置づけられることが多いです。
30日移動平均ボラティリティ:資産の過去30日間のリターンの年率換算標準偏差を測定、変動するリスクを示すため毎日更新されます。価格変動の激しさを定量し、値が高いほどリスクが大きいことを示します。
ディベースメント(通貨価値の切り下げ):通常、インフレ、過剰な通貨発行、あるいは時間の経過とともに通貨の価値を弱める政策によって引き起こされる、通貨の実質価値または購買力の低下を指します。
タカ派的な政策転換:中央銀行や政策当局のメッセージが金融引き締め方向へとシフトすることで、通常、政策金利の引き上げ、利下げ幅の縮小、あるいはインフレ抑制の強化を示唆します。
代替不換通貨:主要な準備通貨(特に米ドル)の代替として使用される、非伝統的な不換通貨を指します。
米議会予算局(CBO):超党派の米国議会機関で、議会に対して独立した予算および経済分析を提供しています。CBOは、提出された法案についてのコストの試算、連邦予算の予測、財政赤字・債務・利払い費・長期的な財政の持続可能性などを含む財政見通しを分析しています。CBOは政策提言は行いません。
国際金融協会(IIF):銀行、資産運用会社、保険会社、政府系ファンド、ヘッジファンド、中央銀行やその他世界の金融機関を代表する国際的な金融業界団体です。IIFは各国政府、家計、企業、金融機関の債務水準を追跡する「グローバル債務モニター」で広く知られています。
国際エネルギー機関(IEA):世界のエネルギー市場に関するデータ、予測、政策分析、提言を提供する政府間エネルギー機関です。IEAは1974年、大規模な石油供給の混乱に対する各国の対応を調整するために設立されましたが、現在では、その活動範囲は、石油、ガス、電力、再生可能エネルギー、エネルギー安全保障、エネルギー転換に及んでいます。