「20年投資するとマイナスになりにくい」といえる根拠
過去のデータでは、20年程度の保有期間を取るとマイナスになりにくい傾向があります。長期投資の期間について問われたときに20年は投資しましょうと答えることが多いのも、そういった背景があります。
オルカンはMSCI ACWIという指数に連動していると説明しましたが、このデータが取れるのは1998年からです。1998年から10年のローリングリターン(測定期間を1カ月ずつずらして計測したリターン)と20年のローリングリターンを測定すると、10年のローリングリターンはマイナスとなる期間もありますが、20年のローリングリターンはおおよそ4%から10%の間に収まっています。
このことは、市場の大きな下落に遭遇すると、10年という期間では必ずしも回復する余裕はないものの、20年の期間があれば、回復する期待が持てるということを示しています。
利益が出ても、急落しても「市場に居続ける」
ここで注意したいことは20年の“長期投資”の意味です。20年間の長期投資というのは、オルカンやS&P500といった市場と連動する分散された株式ファンドを一度買ったら、20年間持ち続けるということです。つまり、利益が出たから売却するとか、急落したから売却するとか、途中でそういうことをしてはいけません。売却するということは、一時的に市場を離れてしまうことになります。
市場を離れたときに、大きな値上がりをすることもあるかもしれません。そして、その大きな値上がりがいつあるのかは、誰も予測できないのです。「過去30年間(1995〜2024)でS&P500に全期間投資していた場合、最も上昇した10日を逃したらリターンがほぼ半分になった」というレポートがあります。このように、“ほんの数日”を逃すだけで、長期投資の成果が大きく変わる可能性が高いのが株式投資です。
「市場が好調のときだけ市場に入ればいい」「暴落時に逃げて、回復を待てばいい」といった“タイミング重視”の戦略は、実際には成果を出すことが難しい投資手法であるといわざるを得ません。
したがって、私たちは短期的な値動きを予測しようとするより「市場に居続ける(Time in the Market)」ことを重視すべきです。市場に出たり入ったりを繰り返す行為は、一見するとリスクを避けているようですが、実際には、相場が大きく回復する局面や、リターンの大部分を生み出す限られた「上昇日」を逃してしまうリスクを高めます。
株式市場の長期リターンは、毎日の平均的な上昇の積み重ねで生まれているわけではありません。ごく一部の大きな上昇局面が、全体の成果を左右しています。感情に流されて市場から離れてしまうことは、その最も重要な瞬間に立ち会えない可能性を高めてしまうのです。
だからこそ、投資において本当に重要なのは、「当てること」ではなく、「続けること」です。“Time in the market beats timing the market.”(市場のタイミングを計ろうとするよりも、市場に居続ける時間のほうが、はるかに大きな成果をもたらす)という投資の格言があることも、それを証明しているといえるでしょう。
長期投資とは、相場を完璧に予測する技術ではありません。変動を受け入れながらも、市場との関係を断たずに持ち続ける姿勢そのものが、最終的なリターンを決定づけるのです。


