(※写真はイメージです/PIXTA)

持ち家は老後の安心につながると考えられがちですが、維持管理や修繕、固定資産税などの負担に加え、広さそのものが生活の負担になることもあります。総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の可処分所得は月22万1,544円、消費支出は月26万4,148円です。収入が限られる中で、住まいにかかる固定費は家計に大きく影響します。老後の住まいは、「維持し続けられるか」が問われるようになります。

「1DKで十分だった」転居後に見えた暮らしの変化

数ヵ月後、夫婦は戸建てを売却し、公営住宅への転居を決めました。間取りは1DK。以前の家と比べると大幅にコンパクトな住まいです。

 

「最初は不安もありました。でも、実際に暮らしてみると、これで十分だと思いました」

 

家賃は大幅に下がり、固定費の見通しが立つようになりました。掃除の負担も減り、日常の動線もシンプルになりました。

 

「移動が楽なんです。全部が一つの空間に収まっているので、体への負担も少ない」

 

一方で、戸建てを手放すことへの寂しさがなかったわけではありません。

 

「思い出もありましたし、最初は少し喪失感もありました」

 

それでも、生活を続けていくうちに、その感情は少しずつ変わっていきました。

 

「安心感のほうが大きくなっていきました。先の見通しが立つと、それだけで気持ちが違います」

 

大きく何かが劇的に改善したわけではありません。生活はこれまでと同じように続いています。ただ、日々の負担と不安が少しずつ軽くなりました。

 

「家を小さくしたというより、暮らしを身の丈に合わせた感覚です」

 

持ち家を手放すことは簡単な決断ではありません。それでも、老後の生活を続けるためには、「持ち続けること」より「無理なく暮らせること」を優先する場面もあります。

 

「マイホームが安心だと思っていました。でも、私たちにとっては、手放すことが安心につながりました」

 

老後の住まいに正解はありません。山本さん夫婦にとっての答えは、「広い家に住み続けること」ではなく、「続けられる暮らしに変えること」でした。

 

 

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