(※写真はイメージです/PIXTA)

退職後、「これまでできなかったことを楽しみたい」と考える人は少なくありません。旅行や趣味にまとまったお金を使うこと自体は自然な選択です。ただし、老後の家計は現役時代と異なり、収入が限られる中で支出をコントロールする必要があります。総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の可処分所得は月22万1,544円、消費支出は月26万4,148円で、平均的に赤字となっています。大きな支出は、その後の生活に長く影響する可能性があります。

「楽しかったけど、このままでは持たない」夫婦の選択

ある日、正一さんは通帳を見ながらこう口にしました。

 

「このままだと、思っていたより早く厳しくなるかもしれない」

 

明子さんも同じ感覚を持っていたといいます。

 

「楽しかったことに後悔はないんです。でも、そのあとの生活をもう少し現実的に考えるべきだったと思いました」

 

夫婦は話し合いの末、生活の見直しを始めました。外食の回数を減らし、日々の支出を細かく記録するようにしたほか、一部の支出については優先順位をつけて削減することにしました。

 

さらに、正一さんは短時間の仕事を検討し始めました。

 

「完全に働かない前提でしたが、少しでも収入があれば気持ちが違うと思ったんです」

 

大きく何かが一気に変わったわけではありません。生活が苦しくなったわけでも、すぐに資金が尽きる状況でもありません。それでも、夫婦は「あの決断のあとをどう生きるか」を改めて考えるようになりました。

 

「クルーズに行ったこと自体は間違いではなかったと思います。ただ、その後の生活をどう支えるかまで、もっと具体的に考えておくべきでした」

 

老後の支出は、一度の大きな決断だけでなく、その後に続く日常の積み重ねによって左右されます。

 

「あの旅が終わりではなく、そのあとも生活は続いていくんだと、ようやく実感しました」

 

楽しみのための支出と、その後の暮らし。そのバランスをどう取るかは、それぞれの選択に委ねられています。

 

 

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