(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者の一人暮らしでは、日常の小さな異変が大きな不安につながることがあります。体調や家計だけでなく、防犯面の不安もその一つです。内閣府『令和7年版高齢社会白書』では、65歳以上の一人暮らしは増加しています。離れて暮らす家族にとって、深夜の連絡は、親の暮らしを見直すきっかけになることもあります。

「一人でいるのが怖い」玄関の傷が変えた暮らし

その夜、義彦さんは母を自宅に連れて帰ることも考えました。しかし、敏子さんは「家を空けるのも怖い」と言い、結局、義彦さんが実家に泊まることになりました。

 

「朝まで母はほとんど眠れなかったと思います。物音がするたびに顔を上げていました」

 

翌日、鍵の交換と補助錠の設置を手配し、防犯カメラ付きのインターホンも導入しました。近所の人にも事情を伝え、しばらく様子を見ることにしました。

 

それでも、敏子さんの不安はすぐには消えませんでした。

 

「昼間でも玄関のほうばかり見ているんです。外で人の声がすると、びくっとしていました」

 

義彦さんが最もこたえたのは、母がぽつりと言った言葉でした。

 

「一人でいるのが、急に怖くなっちゃった」

 

それまで母は「私はまだ大丈夫」と言い続けていました。けれど、今回の出来事で、その言葉の裏にあった不安が一気に表に出たように感じたといいます。

 

内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、65歳以上の一人暮らしの者は男女ともに増加しており、令和7年には65歳以上人口に占める割合が男性18.3%、女性25.4%になると推計されています。高齢の一人暮らしでは、体調面だけでなく、防犯や災害時の不安も暮らしの大きな課題になります。

 

その後、義彦さんは母と話し合い、見守りサービスの利用を始めました。週に数回の電話確認に加え、玄関まわりのセンサーや、緊急時に連絡できる仕組みも整えたといいます。

 

「施設に入るとか、同居するとか、すぐに大きく変える話ではありませんでした。でも、一人で何とかする前提はもう無理だと思いました」

 

敏子さんも最初は「大げさにしなくていい」と言っていましたが、今では「誰かにつながっていると思うと少し安心する」と話すようになりました。

 

「母の暮らしはもう母一人だけで守れるものではないんだと思っています」

 

深夜の電話は、親の暮らしをどう支えるか、家族で考え直すためのきっかけにもなったといいます。

 

 

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