「いつ使うか」という視点…見直した老後の設計
その後、伊藤さんは年金の受給開始について改めて考え直しました。
厚生労働省『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、老齢厚生年金の平均受給額は月15万1,142円で、繰下げによる増額は個人の状況によって大きく差が出ます。また、実際には繰下げ受給を選択する人は一部にとどまっているのが現状です。
伊藤さんは、完全な繰下げではなく、一部受給の開始や就労との組み合わせを検討するようになりました。
「今の生活を犠牲にしてまで、将来の金額だけを追うのは違う気がしてきたんです」
現在は短時間のアルバイトを始めながら、年金の受給開始時期を柔軟に考えているといいます。
「もっと早く気づいていれば、ここまで無理をしなかったかもしれません」
年金は「いくらもらえるか」だけでなく、「いつ、どう受け取るか」によって生活の質が大きく変わります。伊藤さんは、将来の安心だけを見ていた計画を見直し、「今」と「これから」のバランスを取り直し始めました。
「長く生きる前提も大事ですが、今の時間も同じくらい大事ですからね」
繰下げ受給は有効な選択肢の一つですが、それがすべての人にとって最適とは限りません。老後の設計には、自分の体力や生活状況に応じた柔軟な判断が求められています。
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