「これなら大丈夫なはず」質素な生活で積み上げた安心
数年前に会社を退職し。一人暮らしをしている正人さん(仮名・67歳)。現在の収入は年金月15万円。現役時代から堅実な生活を心がけ、退職時点で貯金は1,800万円ありました。
「贅沢はしないタイプでしたし、これだけあれば何とかなると思っていました」
退職後は、生活費を月12万円前後に抑える暮らしを続けていました。外食はほとんどせず、日用品も必要最低限。スーパーの値引きシールを意識する生活は、現役時代から変わらなかったといいます。
「特別なことをしなければ、お金は減っていくにしても、ゆっくりだろうと考えていました」
その見込みは、当初は大きく外れていなかったといいます。ところが、ある出来事をきっかけに状況は一変しました。
きっかけは、自宅のトラブルでした。
ある日、キッチンの床下から水漏れが見つかり、配管の大規模な修繕が必要になったのです。築年数の古い住宅だったため、部分的な修理では済まず、結果として工事費は200万円近くにのぼりました。
「最初は10万円、20万円くらいで済むと思っていたんですが、見積もりを見て言葉が出ませんでした」
さらに、その直後に自身の体調不良も重なります。通院や検査が続き、医療費の自己負担も増えていきました。
「一気にお金が出ていく感覚でした。通帳の残高を見て、初めて“このままだとまずい”と思いました」
もともと余裕を持っていたはずの1,800万円という貯蓄も、大きな支出が重なると、心理的な余裕は一気に失われます。
「“このペースで減っていったらどうなるんだろう”という不安が、ずっと頭から離れませんでした」
