(※写真はイメージです/PIXTA)

老後に向けて一定の貯蓄を確保し、支出を抑えながら暮らしていれば安心――そう考える人は少なくありません。しかし実際には、医療費や住まいの修繕、家族に関わる支出など、予想していなかった大きな出費が重なることもあります。総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の単身無職世帯の平均消費支出は月約14.8万円、可処分所得は11.8万円で、収入だけでは賄いきれないケースも多く見られます。計画どおりにいかないことを前提にした備えが求められています。

「これなら大丈夫なはず」質素な生活で積み上げた安心

数年前に会社を退職し。一人暮らしをしている正人さん(仮名・67歳)。現在の収入は年金月15万円。現役時代から堅実な生活を心がけ、退職時点で貯金は1,800万円ありました。

 

「贅沢はしないタイプでしたし、これだけあれば何とかなると思っていました」

 

退職後は、生活費を月12万円前後に抑える暮らしを続けていました。外食はほとんどせず、日用品も必要最低限。スーパーの値引きシールを意識する生活は、現役時代から変わらなかったといいます。

 

「特別なことをしなければ、お金は減っていくにしても、ゆっくりだろうと考えていました」

 

その見込みは、当初は大きく外れていなかったといいます。ところが、ある出来事をきっかけに状況は一変しました。

 

きっかけは、自宅のトラブルでした。

 

ある日、キッチンの床下から水漏れが見つかり、配管の大規模な修繕が必要になったのです。築年数の古い住宅だったため、部分的な修理では済まず、結果として工事費は200万円近くにのぼりました。

 

「最初は10万円、20万円くらいで済むと思っていたんですが、見積もりを見て言葉が出ませんでした」

 

さらに、その直後に自身の体調不良も重なります。通院や検査が続き、医療費の自己負担も増えていきました。

 

「一気にお金が出ていく感覚でした。通帳の残高を見て、初めて“このままだとまずい”と思いました」

 

もともと余裕を持っていたはずの1,800万円という貯蓄も、大きな支出が重なると、心理的な余裕は一気に失われます。

 

「“このペースで減っていったらどうなるんだろう”という不安が、ずっと頭から離れませんでした」

 

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