年金は“いつ受け取るのが得か”という問い
年金は原則65歳から受給できますが、60歳からの「繰上げ受給」や、66歳以降に受け取る「繰下げ受給」も選択可能です。
繰下げを選べば、受給開始を1ヵ月遅らせるごとに0.7%ずつ年金額が増え、最大で84%の増額。一方で繰上げの場合は、1ヵ月あたり0.4%ずつ減額され、その状態が生涯続きます。
「年金が増える」と聞くと、繰下げのほうが魅力的に見えるかもしれませんが、そう単純ではありません。
たとえば65歳からの受給を70歳まで繰り下げた場合、損益分岐点はおおむね80歳前後とされます。つまり、それ以上長く生きれば繰下げのほうが有利になりますが、それより前であれば受給総額は少なくなります。
厚生労働省『令和6年簡易生命表の概況』によると、日本人の平均寿命は女性87.13歳、男性81.09歳。男性に関していえば、平均まで生きてやっと数字上は“トントン”といえるラインです。
中村さんのように「長生きリスク」に備えて繰下げを選ぶ人もいれば、「いつまで生きるかわからない」と繰上げを選ぶ人もいます。どちらが正解ともいえませんが、ひとつ言えるのは、メリットだけを見て決めるのは危ういということ。
繰下げには、受給開始までの無収入期間をどう乗り切るかという課題がありますし、その間に体調を崩す可能性もあります。逆に繰上げには、生涯にわたって受給額が減る、障害年金を受け取れなくなるといったデメリットがあります。
お金の損得だけでなく、「どう生きたいか」「どんな老後を送りたいか」まで含めて考えること。年金は人生設計そのものでもあるのです。
参考
日本年金機構「老齢年金の制度」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/index.html
厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life24/index.html
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