家計だけでなく「関係性」も見直す必要がある
このケースで重要なのは、「お金の問題」と「心の問題」が密接に絡み合っていることです。
もし家計に余裕があれば、娘の独立にここまで強く動揺しなかったかもしれません。また、心の自立ができていれば、家計の変化にも冷静に対応できた可能性もあります。
つまり、
・子どもの収入に依存した家計
・子どもに支えられる前提の生活
・夫婦関係の希薄さ
これらが重なったとき、変化に対する耐性が極端に弱くなってしまうのです。
立て直しは「現実を見ること」から
由美さんが独立してしばらくすると、和子さんはようやく現実を見つめるようになりました。娘にすがって迷惑をかけるような親であってはならないーーそう自覚したのです。
まず取り組んだのは、現状の正確な把握です。「何にいくら使っているのか」を書き出してみると、意外にも削減できる支出が見えてきました。
加入したままの保険の見直し、使っていないサブスクの解約、スマホ料金のプラン変更。これだけで、月2万円以上の削減に成功したのです。
さらに和子さんは、「家にいると考え込んでしまうから」と、週2回スーパーの品出しのパートを始めます。月3万円ほどの収入は、家計だけでなく気持ちの支えにもなりました。
手放すことは、失うことではない
さらに時間が経つにつれ、夫婦の関係にも変化が生まれます。最初はぎこちなかった会話も、少しずつ増えていきました。
「川べりの桜、かなり花が開いてきたよ」
「そうか、明日一緒に散歩にいくか」
こんな小さなやり取りの積み重ねが、関係をゆっくりと変えていったのです。
和子さんは最後に「最初は不安しかありませんでした。でも今は、これでよかったと思っています」と話しています。
総務省統計局「労働力調査(2024年平均)」によると、35歳から54歳の未婚者のうち、親と同居している人は全国に約511万人います。実家で暮らしながら、家にお金を入れ、親と生活を共にする。そうした形は、多くの家庭で“当たり前の選択肢”として存在しています。
しかし、もし子どもが家を出る決断をしたのであれば、その一歩を心から応援したいもの。子どもの自立は、本来喜ばしい出来事です。
子どもが家を出ていくとき、多くの親は「寂しさ」や「不安」を感じます。しかし、独り立ちを決意した子どもを手放すことは、決して子どもを失うことではありません。それは、親自身がもう一度自立するための、大切なきっかけでもあるのです。
いずれ訪れるかもしれない変化だからこそ、「子どもがいなくなった後の生活」を前提に、一度立ち止まって考えてみることが、先々の安心につながります。
新井智美
トータルマネーコンサルタント
CFP®
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