年間96万円の減少が突きつける現実
由美さんが家を出て行くと、当然ながら毎月8万円は入ってきません。年間にすると96万円の減収です。
この影響は想像以上に大きいものでした。食費を削るために買い物の回数を減らしたり、エアコンの使用を控えたり、趣味や外出を我慢したり……和子さん夫婦は、日々の生活の質を低下させることを余儀なくされました。
さらに和子さんたちを苦しめたのは、お金の余裕がないことによる精神的な圧迫です。これまでなら気にせず支払えていた医療費や冠婚葬祭費も、「今月は大丈夫だろうか」と不安を感じるように。
静まり返った家と、埋まらない夫との距離
変わったのは家計だけではありません。由美さんが引っ越した後、家の中は驚くほど静かになりました。朝も夜も、聞こえるのはテレビの音だけ。
これまで自然にあった会話が消え、夫婦2人だけの時間が増えたものの、長年娘を中心に回っていた生活の中で、夫婦の会話は意外なほど少なかったのです。
「何を話せばいいのかわからないし、一緒にいても気まずい」
そんな毎日が、じわじわと和子さんの心を締めつけていきました。和子さんは後に、「あのとき本当に辛かったのは、お金よりも心だったかもしれない」と振り返ります。
この先ずっと夫と2人なのかという不安や、自分の役割がなくなったような喪失感、娘に頼っていた現実を突きつけられた戸惑い……それらが押し寄せていたのです。

