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「記憶の経営」から「記録の経営」へ
記憶を根拠にしたものから記録を根拠にしたものに、経営も変わっていかなければなりません。いや記憶だけではなく、記録もしてきたという人もいると思います。確かに人類は古くから記録を残してきました。壁画や書物、書や絵画など、アナログな方法で文化や知識を仲間や後代に伝えてきたのです。
しかしこれらの記録は担い手も記録の対象も非常に限定的で、特定の目的に基づいたものでした。記録媒体も劣化が避けられず、時代の進展とともに失われたものは少なくありません。複製するとすれば、原本を写さなければならず、それは膨大な労力を必要とするものでした。記録はあっても、アナログの記録は継承や共有、再利用や活用が非常に難しいものだったのです。
しかし印刷技術が発達し、複写機が発明されると複製は容易になり、さらにコンピュータが登場し、デジタル技術が進化すると、記録のあり方は劇的に変わりました。
特にここ10年ほどは、インターネットの普及と通信の高速化、スマートフォンの普及によって、誰もが日常的にあらゆる行動をデジタルデータとして記録し、蓄積したり、交換して共有・活用することができるようになったのです。手元に1台のスマートフォンがあれば簡単に写真撮影ができ、声も録音できます。しかもLLMが急速に進化したことを背景に、話しかけるだけで、瞬時にその内容をテキスト化することができます。
10年ほど前までは、音声データを耳で聞いてテキストにする「文字起こし」という作業は人が担っており、専門の会社も数多く存在していました。1時間ほどの録音を文字に起こすには、おおむね5~6倍の時間がかかるといわれていました。専門業者に依頼すれば、数日の納期と、内容に応じて数千円から1万円程度の費用が必要でした。
さらに、写真に撮ったりスキャンしたテキストの画像などがあれば、そこに写っている文字をすぐにテキストデータに変換することも可能です。そのときに使われるOCRと呼ばれるソフトは以前からありましたが、当初は画像認識の精度が低く、誤った変換が多いことからほとんど使いものになりませんでした。
時間はかかっても人が手で入力するのがいちばん確実だったのです。しかし今はその精度も急速に向上し、現在は、ほとんど修正の必要のないテキストデータが無料ソフトでも瞬時に作成できます。
しかもLLMが登場し生成AIが誰でも使えるようになると、平易な日常語による指示で、膨大なテキストデータの内容を要約したり、見出しをつけて項目別に整理したり、特定の技術やトピックごとに再構成したりすることができます。記録の時代はAIとセットになることで、パラダイムシフトをもたらすものになりました。
近藤 昇
株式会社ブレインワークス 代表取締役
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