「自由なはずの老後」が揺らぐ…孤独と不安の正体
総務省統計局『家計調査報告〔家計収支編〕2025年(令和7年)平均結果の概要』によると、高齢夫婦のみの無職世帯は平均で月約4万円の赤字となっており、地方であっても生活コストが大幅に下がるとは限りません。
正明さん夫妻も、当初の想定ほど支出は減らなかったといいます。
「車の維持費やガソリン代、家の修繕費が想像以上にかかりました」
特に古い一戸建ては、購入後もメンテナンス費用が必要になります。外壁の補修や水回りの修理など、予想外の出費が重なりました。
「“家賃がかからない”だけで、住宅費がゼロになるわけではなかったんです」
さらに大きかったのは、「人との距離」でした。都市部では当たり前だった、気軽に会える友人や知人がいない。近所付き合いはあるものの、気心の知れた関係とは違います。
「話したいことを気軽に話せる相手がいない。それがじわじわ効いてきました」
移住から2年ほど経った頃、由美子さんはふとこう口にしたといいます。
「ここで、このままずっと暮らしていけるのかな」
その言葉に、正明さんも答えられなかったそうです。
「最初は“理想の暮らし”だと思っていたのに、気づけば不安の方が大きくなっていました」
現在、夫妻は都市部への再移住も視野に入れ、情報収集を始めています。
「失敗だったとまでは思っていません。でも、“思っていたのとは違った”というのが正直なところです」
地方移住は、生活を見直す大きな選択です。しかし、その判断は住居費や環境だけでなく、医療、交通、人間関係といった複数の要素を含んでいます。
「自然に囲まれて暮らしたいという気持ちは、今でもあります。でも、それだけでは生活は成り立たないんですね」
理想の老後を思い描くこと自体は間違いではありません。ただ、その理想を現実にするには、見えにくい条件まで含めて考える必要があるのかもしれません。
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