(※写真はイメージです/PIXTA)

地方移住は、住居費の軽減やゆとりある暮らしを期待して選ばれることが少なくありません。しかし、内閣官房・内閣府『東京圏、地方での暮らしや移住及び地方への関心に関する意識調査(令和2年)』では、移住希望の理由として「自然環境」や「ゆとりある生活」が挙げられる一方、実際の移住後には「生活利便性」や「人間関係」に不安を感じるケースも指摘されています。理想と現実の差が、想定以上に大きくなることもあるのです。

「自由なはずの老後」が揺らぐ…孤独と不安の正体

総務省統計局『家計調査報告〔家計収支編〕2025年(令和7年)平均結果の概要』によると、高齢夫婦のみの無職世帯は平均で月約4万円の赤字となっており、地方であっても生活コストが大幅に下がるとは限りません。

 

正明さん夫妻も、当初の想定ほど支出は減らなかったといいます。

 

「車の維持費やガソリン代、家の修繕費が想像以上にかかりました」

 

特に古い一戸建ては、購入後もメンテナンス費用が必要になります。外壁の補修や水回りの修理など、予想外の出費が重なりました。

 

「“家賃がかからない”だけで、住宅費がゼロになるわけではなかったんです」

 

さらに大きかったのは、「人との距離」でした。都市部では当たり前だった、気軽に会える友人や知人がいない。近所付き合いはあるものの、気心の知れた関係とは違います。

 

「話したいことを気軽に話せる相手がいない。それがじわじわ効いてきました」

 

移住から2年ほど経った頃、由美子さんはふとこう口にしたといいます。

 

「ここで、このままずっと暮らしていけるのかな」

 

その言葉に、正明さんも答えられなかったそうです。

 

「最初は“理想の暮らし”だと思っていたのに、気づけば不安の方が大きくなっていました」

 

現在、夫妻は都市部への再移住も視野に入れ、情報収集を始めています。

 

「失敗だったとまでは思っていません。でも、“思っていたのとは違った”というのが正直なところです」

 

地方移住は、生活を見直す大きな選択です。しかし、その判断は住居費や環境だけでなく、医療、交通、人間関係といった複数の要素を含んでいます。

 

「自然に囲まれて暮らしたいという気持ちは、今でもあります。でも、それだけでは生活は成り立たないんですね」

 

理想の老後を思い描くこと自体は間違いではありません。ただ、その理想を現実にするには、見えにくい条件まで含めて考える必要があるのかもしれません。

 

 

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