(※写真はイメージです/PIXTA)

地方移住は、住居費の軽減やゆとりある暮らしを期待して選ばれることが少なくありません。しかし、内閣官房・内閣府『東京圏、地方での暮らしや移住及び地方への関心に関する意識調査(令和2年)』では、移住希望の理由として「自然環境」や「ゆとりある生活」が挙げられる一方、実際の移住後には「生活利便性」や「人間関係」に不安を感じるケースも指摘されています。理想と現実の差が、想定以上に大きくなることもあるのです。

「移住して、自然に囲まれて暮らすはずが」…現実とのギャップ

「ここなら、穏やかに暮らしていけると思ったんです」

 

そう振り返るのは、元会社員の正明さん(仮名・67歳)と妻の由美子さん(仮名・65歳)です。

 

都内で長年暮らしてきた2人は、定年退職を機に地方移住を決意しました。退職金は約1,800万円。都内のマンションを売却し、地方で中古の一戸建てを購入しました。

 

「住宅ローンもなくなるし、生活費も抑えられると思っていました」

 

移住当初の生活は、確かに新鮮だったといいます。静かな環境、広い庭、四季の変化。都市部では得られなかった豊かさがありました。

 

「朝、鳥の声で目が覚めるんです。最初は本当に気持ちよくて」

 

しかし、その印象は徐々に変わっていきました。

 

最初に感じたのは、「距離」でした。スーパーや病院、役所など、生活に必要な施設がすべて車での移動を前提としていたのです。

 

「車がないと何もできない。しかも、歳を重ねるほど運転も不安になります」

 

由美子さんは、運転に自信がなく、日常の買い物も正明さんに頼るようになっていきました。

 

「自分一人で動けないというのが、思った以上にストレスでした」

 

さらに、医療面の不安もありました。近隣には小さな診療所はあるものの、専門的な検査や治療が必要な場合は、車で1時間以上かかる都市部の病院まで行かなければなりません。

 

「何かあったときにすぐ診てもらえない、というのが怖くなりました」

 

生活の利便性だけでなく、人間関係にも戸惑いがありました。地域のつながりは強く、行事や近所付き合いも頻繁にあります。良くも悪くも“距離が近い”環境でした。

 

「最初は歓迎してもらいましたが、その分、関わりも濃いんです。気を使う場面も多くて」

 

都市部のように、適度な距離感で暮らすことは難しかったといいます。

 

「静かに暮らしたかったはずなのに、逆に疲れることもありました」

 

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