「自分の生活を守るのが先」金銭的援助を避けてきたが…
「結局、自分のためだけなんだね」
その言葉に、義雄さん(仮名・79歳)は何も返せなかったといいます。言葉を向けたのは、長男の誠さん(仮名・52歳)でした。
義雄さんは妻を10年前に亡くして以降、一人暮らしを続けてきました。年金は月18万円ほど。加えて、長年の勤務で築いた資産は約7,500万円にのぼります。
「老後は誰にも頼らずにやっていく」
それが、義雄さんの考えでした。
子どもたちには「迷惑をかけたくない」という思いが強く、金銭的な援助もほとんど行ってきませんでした。孫への支援や贈与についても、「自分の生活を守るのが先」と考えていたといいます。
「自分の老後資金は自分で確保する。それが当たり前だと思っていました」
実際、生活は安定していました。持ち家でローンもなく、日々の支出も抑えていたため、資産が大きく減ることはありませんでした。
しかし、その一方で、家族との距離は少しずつ広がっていきました。
「会うのは年に数回程度でした。連絡も最低限です」
きっかけとなったのは、長男からの相談でした。子どもの進学費用や住宅ローンの負担が重なり、一時的な援助を頼みたいという内容でした。
義雄さんは、その場で断りました。
「悪いが、それは自分たちで何とかすべきだろう」
その判断に迷いはなかったといいます。
「助け始めたらきりがないと思いましたし、自分の資産を守ることが最優先だと考えていました」
その場で長男は何も言いませんでした。ただそれ以降、連絡は明らかに減っていきました。
そして数ヵ月後、久しぶりに顔を合わせたとき、長男はぽつりとこう言ったのです。
「結局、自分のためだけなんだね」
