「もう遅い」はない…今日から始める3つの立て直し
啓子さんの入院をきっかけに、筆者は達也さんとも面談の機会を設けました。最初は「FPに話すことなんかない」と渋っていた達也さんですが、通帳の残高190万円という数字を見せたとき、ようやく表情が変わりました。
「……え、これしかないの」
そこから少しずつ、現実に向き合う対話が始まりました。筆者からは3つの提案をしています。
まず1つ目は、達也さんの就労です。49歳からの再就職は簡単ではありませんが、2025年の全国の有効求人倍率は1.2倍前後で推移しており、人手不足の業種を中心に働き口は存在します。飲食業界の経験を活かせば、調理補助や食品製造といった現場は年齢に寛容な傾向があります。まずは週3日からでもアルバイトを始め、社会復帰のリズムをつくることを勧めました。
2つ目は、国民年金の立て直しです。達也さんの未納期間のうち、過去に免除や納付猶予の申請をしていた期間があれば、10年以内の分は「追納」が可能です。一方、免除申請もせず単に未納だった期間は、残念ながら2年の時効を過ぎるとあとから納めることができません。
ただし、いまから60歳まで保険料を欠かさず納め、さらに60歳以降は65歳まで「任意加入」を続ければ、納付月数を上積みすることは可能です。達也さんの場合、厚生年金の3年間に加えて今後16年間(49歳から65歳まで)納付を続ければ、合計で約19年分。老齢基礎年金だけでも月3万円台は確保できる見込みです。さらに就労して厚生年金に加入できれば、上乗せも期待できます。
3つ目は、啓子さんの家計防衛です。入院費用は高額療養費制度を活用すれば自己負担は月数万円に抑えられますが、問題はその後のリハビリと介護の可能性です。残り190万円の貯蓄を啓子さん自身の医療と介護のために確保し、達也さん関連の支出は本人の収入から賄う体制に切り替える必要があります。
面談の最後、達也さんはこうつぶやきました。
「おふくろが元気でいてくれたから、なにも考えなくてよかったんだよな……」
その言葉には、20年近く目をそらしてきた現実への気づきが、少しだけ混じっているように感じました。
親の年金や貯蓄は、いつまでもあるものではありません。高齢の親に経済的に依存している中高年の子は、決して珍しい存在ではなくなっています。しかし、親の健康が揺らいだとき、その生活は立ち行かなくなります。「うちは大丈夫」と思っている家庭ほど、一度立ち止まって家計の現実を確認してほしいです。年齢を理由に「もう遅い」と諦める必要はありません。今日からできることは、必ずあります。
波多 勇気
波多FP事務所 代表
ファイナンシャルプランナー
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