解決までに時間がかかる「遺産分割」
遺産の話合いは、まとまるまでに時間(期間)がかかります。全国の家庭裁判所の統計(平成25年)をみると、家庭裁判所で扱われた「遺産分割調停・審判」は、1年を超えるものが全体の約32%、おおよそ3分の1です。2年を超えるものが約9%、3年を超えるものも約4%はあります。
私が担当している遺産分割の案件で一番長いのは、8年間を超えました。夫が亡くなってからだと、とうとう10年も経ってしまいました。まだ解決していません。
※本書『老活弁護士が教えます!わかりやすい遺言書の書き方』の後掲のコラム参照
遺言書は死ぬ間際に書くものと認識されている!?
このように遺言書は書いておいたほうがいいのです。私はすべての人に「遺言書を書いてほしい」と思っています。欧米では、遺言書があるほうが当たり前です。日本もそういう社会にしたいと考えています。
しかし、遺言書を書いている人は多くありません。自分で書いて内緒にしている人も多いので、正確な数字を把握できませんが、私のセミナーの参加者の方に書いているかを尋ねることが多いのですが、1割にも満たないのが現実です。では、なぜ遺言書を書かないのでしょうか? ずっとセミナーをやっているなかで、いろいろ遺言書を書かない理由をうかがうことも多くあります。そうした経験から、次の4つのタイプに分類することができました。
★遺言書は「縁起が悪い」と思っている
親に遺言書を書いてほしいという方がたくさんいらっしゃいます。
「父に遺言書を書いてほしい」と言う山田さん(仮名)もそのひとり。「不動産がいくつかあり、預貯金もそれなりにあるし、自分の兄弟でかならずもめるから、遺言書を書いてほしい。書いてくれないと大変だよ」と言います。しかし、父親にそのことをいうと、機嫌が悪くなるそうです。機嫌が悪くなるくらいならまだましなほうで、なかには怒り出すお父さんもいます。
「何てこと言うんだ!おれはまだピンピンしているぞ!おれを殺す気か!」
遺言書を書いたらすぐに死んでしまうと思っているのでしょうか。遺言書は死ぬ間際に書くものと思っているのでしょうか。なかには「遺書(いしょ)」と「遺言書」を混同している方もおられるようです。「遺書」は、なんとなく死ぬ直前に書くイメージがあります。「『遺書を書け』ということは『死んでくれ』と言っている」。そんな風に感じてしまうのかもしれません。
実際には、遺言書を書いたからといって、早く死ぬことは決してありません。絶対関係ありません。むしろ、遺言書を書いた人のほうが長生きしているように思います。だって、相続について心配がなくなるのです。残りの人生を心置きなく過ごせます。