今回は、遺産が少ないほど揉めやすい、相続トラブルの実情を見ていきます。※本連載は、相続専門の弁護士である大竹夏夫氏の著書、『老活弁護士®が教えます!わかりやすい遺言書の書き方』(週刊住宅新聞社)の中から一部を抜粋し、いわゆる「争族」を防ぐための遺言書活用の留意点を見ていきます。

遺産分割事件の約31%は、1000万円以下の相続で発生

「自分には財産がないから(遺言書は)必要ないよ」という方が、よくいらっしゃいます。

 

財産が全然ないという方は少ないでしょうから、「それほど多くない、だから遺言書を書かなくても、遺された家族、妻や夫、子どもたちに任せれば大丈夫。相続でもめることはない」と考えているのだと思います。

 

しかし、これが大きな間違いです。遺産が少ないからといって、もめないとはいえないのです。

 

全国にある家庭裁判所で争われた遺産分割事件(調停・審判)について、平成25年の1年間の遺産の総額について集計されたデータがあります。

 

平成25年遺産分割事件の遺産総額(最高裁判所司法統計を元に作成)
平成25年遺産分割事件の遺産総額(最高裁判所司法統計を元に作成)

 

これを見ると、事件のおおよそ4分の3は、遺産総額が5000万円以下でした。さらに、なんと遺産総額が1000万円以下の事件は、全体の約31%にも達します。これは驚くべき事実です。

 

1000万円以下ですから、実際には数百万円です。遺産総額が700万、800万、900万円です。そして、相続人が1人だったら事件にはならないので、少なくとも2人以上の相続人がその遺産をめぐって争っているわけです。

 

逆に、遺産総額が1億円を超える事件は、全体の約7%しかありませんでした。遺産が多いと相続争いが起きそうな気がしますが、現実は逆なのです。

遺言書は財産の「多い・少ない」に関係なく必要

遺産が多いと・・・、

 

「おれは3億円でいいよ」なんて言って、遺産分割がまとまりやすいのでしょうか。

 

逆に、遺産が少ないと・・・、

 

「お兄ちゃんは大学入学のときお父さんから50万円出してもらったでしょ」などといって、なかなか解決しないのかもしれません。

 

もめる原因はいろいろありますが、遺産が少ないほうがもめる。これは現実です。

 

そんなトラブルを防ぐのが遺言書です。財産の多い少ないに関係なく、遺言書は書いておいたほうがいいのです。

本連載は、2016年6月29日刊行の書籍『老活弁護士が教えます!わかりやすい遺言書の書き方』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

老活弁護士®が教えます! わかりやすい遺言書の書き方

老活弁護士®が教えます! わかりやすい遺言書の書き方

大竹 夏夫

週刊住宅新聞社

「老活」は、「老後に備える準備活動」です。「老活」のなかでも、とても重要なのが「遺言書の作成」です。 自分が残す財産やその他のことを死ぬ前に決めておく。これは実は当たり前のことだと思うのです。 残された人のため…

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