まさかの事態に、失った5年を強く後悔
朝起きた際に手足のしびれと視界の異常を感じ、後に脳梗塞と診断され入院することになったのです。幸い命に別状はありませんでしたが、半身に後遺症が残りました。
ここにきて山口さんを襲ったのは、「お金の不安」ではなく「時間の使い方への後悔」でした。
65〜70歳という、本来であればまだ体力もあり行動範囲も広い5年間を、「将来の安心のため」と考えて抑制的に過ごしてしまったこと。旅行や人付き合いを控えたこと。その積み重ねが、病気をきっかけに一気に重くのしかかってきたのです。
「繰下げで得をした感覚がない。お金を使わないように我慢なんてせずに、健康なうちに目いっぱい楽しめばよかった。失った5年はお金に代えられないものだったのに……」
山口さんはそう振り返るように。
結果的に増額された年金は、病後の生活を支えています。医療費や今後の生活への不安を和らげているのも事実であり、選択そのものが完全な失敗だったとは言い切れません。
ただ、山口さんは「老後資金がもっと少なかったのであれば、きっとこれが正解だったんでしょう。自分の場合、それなりに余裕があったのに『もっと増やしたい』と思ってしまった」
山口さん自身の実感として残ったのは、「お金の正解」と「人生の納得感」は別物だったという後悔の念でした。

