今回は、相続人同士で遺産の分け方が決まらない場合の対処法について見ていきます。※本連載は、相続専門の弁護士である大竹夏夫氏の著書、『老活弁護士®が教えます!わかりやすい遺言書の書き方』(週刊住宅新聞社)の中から一部を抜粋し、いわゆる「争族」を防ぐための遺言書活用の留意点を見ていきます。

仲裁役を加えて相続人全員で話し合う「遺産分割調停」

相続人同士で何度も話し合ったのに、遺産の分け方が決まらない場合(遺産分割協議が成立しない場合)、家庭裁判所に申立てをして、調停手続をすることができます。これを「遺産分割調停」といいます。

 

どんな手続かというと、結局は話合いです。相続人全員が裁判所に出向いて、裁判所の部屋で、改めて誰が何を相続するのか話し合うのです。

 

ただし、相続人の間に、調停委員が入ります。調停委員は仲裁役です。法律専門家とは限りませんが、相続についてくわしく、仲裁の能力があるとして裁判所から頼まれた人です。その調停委員が2〜3人ほど入って、話合いを仕切ってくれます。この調停委員の存在がとても有効なのです。相続人同士で話し合っても、なかなかまとまりません。調停委員が話合いを整理して、問題点をわかりやすくして、そして相続人に譲歩を促します。そうすることで、話合いがまとまることが多いのです。

 

相続人が裁判所に行って話し合うことを「調停期日」といいます。1回の調停期日は2〜3時間です。調停期日は1か月から2か月に1回行われます。話合いがまとまるまでには、5回以上かかることが少なくありません。調停手続が終わるまでに、半年から1年間はかかると思ってください。

 

この調停は、相続人全員が参加する必要があります。すべての調停期日に出席しなければいけないわけではありませんが、最後に調停を終了させるには、全員が裁判所に出向く必要があります。遠方に住んでいる人がいると大変です。

調停手続でも合意ができない場合は「審判」で決める

もし調停手続をしても、誰が何を相続するのか相続人の間で合意できなかった場合は、最終手段として「審判」という手続があります。

 

これは家庭裁判所の裁判官が、遺産の内容や相続人の事情を考慮して、エイヤッと遺産の分け方を決めてくれる手続です。たとえば、長男は不動産、次男は預貯金、三男は株式などというふうに決めてしまいます。

 

相続人間でどうしても決められない場合は、審判で決めてもらうしかありません。

本連載は、2016年6月29日刊行の書籍『老活弁護士が教えます!わかりやすい遺言書の書き方』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

老活弁護士®が教えます! わかりやすい遺言書の書き方

老活弁護士®が教えます! わかりやすい遺言書の書き方

大竹 夏夫

週刊住宅新聞社

「老活」は、「老後に備える準備活動」です。「老活」のなかでも、とても重要なのが「遺言書の作成」です。 自分が残す財産やその他のことを死ぬ前に決めておく。これは実は当たり前のことだと思うのです。 残された人のため…

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