今回は、亡父の遺産か、孫の預金か、 相続人の意見が割れた場合の対処法を見ていきます。※本連載は、相続専門の弁護士である大竹夏夫氏の著書、『老活弁護士®が教えます!わかりやすい遺言書の書き方』(週刊住宅新聞社)の中から一部を抜粋し、いわゆる「争族」を防ぐための遺言書活用の留意点を見ていきます。

地方裁判所に訴訟を提起し、判決を待つしかない

調停や審判ができるのは、遺産の内容や範囲については合意ができている場合だけです。

 

たとえば、亡くなった父が孫名義の銀行口座に定期的に預け入れて預金が溜まっていた場合、その預金は父のもの、つまり遺産なのか、それとも孫のものなのか、という問題があります。これについて、相続人全員で異論がなければ、調停や審判ができます。しかし、1人でも異論を唱えていると、調停も審判もできません。

 

どのようにして解決するのでしょうか? 実は、裁判です。地方裁判所に訴訟を提起して、裁判官に判決を出してもらって、父の預金なのか、孫の預金なのか決めてもらわないといけないのです。

 

最近は、親族といえども他人名義の預金口座を作るのは容易ではありませんから、このようなケースは減ってくるとは思いますが、相続税対策という意味もあって、子どもや孫名義の銀行口座に入れているケースはあるでしょう。そうした口座があるときは、やはり遺言書を作って、それが自分の財産なのか、その名義の人に贈与したものなのか明確にしておく必要があります。

遺言書があれば、行方不明の相続人がいても手続は容易

相続人の1人が行方不明であった場合、相続手続ができません。相続人である以上、その人の実印と印鑑証明書も必要になるからです。

 

まずはとにかく相続人の行方を探します。弁護士・司法書士であれば、職権で住民票を取り寄せることができるので、その人の住所を調べることは難しくありません。ただし、それはあくまで住民票上の住所です。そこに住んでいない人もいます。そうなると、実際にどこにいるのか調べるのは容易ではありません。ケースによっては調査会社に依頼して、行方を探します。

 

どうしても相続人が見つからない場合は、家庭裁判所に申請して、その人の代理人を選んでもらう方法があります。「不在者の財産管理人」といいます。弁護士が選ばれます。その代理人が行方不明の相続人の代わりに、遺産分割協議に参加して、相続手続を進めます。もっとも、遺言書を作成してあれば、もし相続人の中に行方不明の人がいても、相続手続をスムーズに進めることができるのです。

本連載は、2016年6月29日刊行の書籍『老活弁護士が教えます!わかりやすい遺言書の書き方』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

老活弁護士®が教えます! わかりやすい遺言書の書き方

老活弁護士®が教えます! わかりやすい遺言書の書き方

大竹 夏夫

週刊住宅新聞社

「老活」は、「老後に備える準備活動」です。「老活」のなかでも、とても重要なのが「遺言書の作成」です。 自分が残す財産やその他のことを死ぬ前に決めておく。これは実は当たり前のことだと思うのです。 残された人のため…

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