所定給付日数・支給額にも影響
この違いは、所定給付日数にそのまま跳ね返ります。特定受給資格者であれば、45歳以上60歳未満・被保険者期間20年以上の場合、所定給付日数は330日です。他方で、一般の離職者では、被保険者期間が20年以上あっても150日です。
Tさんは「330日もらえる前提」で資金計画を立てていましたが、現実にはその半分以下に近い水準だったわけです。しかも、自己都合退職等にあたる場合には、受給手続日から7日経過した日の翌日から原則1ヵ月の給付制限があります。
さらに、基本手当の「額」も、現役時代の収入感覚とは大きく異なります。基本手当日額は、原則として離職前6ヵ月の賃金日額のおよそ50%~80%で決まりますが、年齢区分ごとに上限があります。45歳以上60歳未満の上限額は、令和7年8月1日現在で日額8,870円(30日相当26万6,100円)です。
年収900万円前後の会社員であれば、賃金水準が高いため、この上限にかかる可能性が高く、「思ったよりはるかに少ない」と感じやすいでしょう。月収ベースの感覚で「かなりもらえる」と考えるのは危険です。
保険・住民税などの固定費負担も考慮する
加えて、退職後は固定費も容赦なくのしかかります。
健康保険は、任意継続、国民健康保険、家族の被扶養者のいずれかを選んで加入手続きをしなければなりません。国民健康保険料(税)は前年所得などに応じて決まり、任意継続にも当然保険料負担があります。
住民税は原則として前年の所得を基に課税されるため、退職後も負担が続きます。退職により給与天引きから普通徴収へ切り替われば、自宅に納付書が届き、自分で納めることになります。
在職中は給与から差し引かれて見えにくかった負担が、退職後は一気に「手取りの減少」として体感されるのです。
Tさんも、実際に退職してからその重みを知りました。再就職先として見つかるのは、年収が大きく下がる中小企業やベンチャー企業が中心です。
もちろん、50代で新天地を切り開くこと自体が間違いというわけではありません。ただ、退職金3,000万円という数字のインパクトや、「失業保険があるから当面は大丈夫だろう」という感覚だけで決めてしまうと、あとから生活設計の前提が崩れます。
