引き出せなくなった現金と、突きつけられた現実
その日以降、修一さんはこれまでのように自由に現金を引き出すことができなくなりました。母の年金は口座に振り込まれているものの、日常的に使う現金の確保が難しくなったのです。
「初めて、自分の生活が母の口座に依存していたことを実感しました」
さらに、母の体調も徐々に変化していきました。通院や介護サービスの利用も検討する必要が出てきます。要介護認定を受ければ、介護サービスの自己負担が発生し、家計への影響も無視できません。
「これからは、母のお金を“自分のために使う”ことはできないと分かりました」
銀行での一件をきっかけに、修一さんは自治体の相談窓口を訪れました。そこで、生活保護や就労支援について説明を受けたといいます。
「戸惑う気持ちもありましたが、もうそう言っていられる状況ではありませんでした」
親の年金や資産は、あくまで親本人の生活を支えるためのものです。民法877条では扶養義務が定められていますが、それは互いに助け合うことを前提としたものであり、一方的な依存を前提としたものではありません。
修一さんは現在、就労支援を受けながら、短時間の仕事を始めています。
「もっと早く、自分の生活を立て直すべきだったと思います」
親子の同居は、安心につながる側面もあります。しかし、経済的な依存関係が強くなりすぎると、どこかで歪みが生じる可能性があります。
「母のためにも、自分のためにも、ちゃんと分けて考えるべきでした」
高齢化が進むなかで、親の資産管理や生活支援のあり方は、ますます重要なテーマとなっています。「誰のお金なのか」「誰の生活なのか」――その境界を曖昧にしないことが、将来のトラブルを防ぐ第一歩となるのかもしれません。
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