(※写真はイメージです/PIXTA)

老後の住まいとして、有料老人ホームを選ぶ人は少なくありません。入居一時金や月額費用が高い施設ほど、手厚いサービスや安心感を期待しがちです。しかし、実際の費用負担は入居時には把握しにくい場合があり、介護度の変化や医療対応、追加サービスによって支出が増えることもあります。契約内容を十分に確認しないまま入居すると、数年後に想定外の負担に直面するケースもあります。

「これで最期まで安心だと思った」高級老人ホームへの入居

都内近郊に住んでいた森田さん夫妻(仮名・70代)は、4年前に高級有料老人ホームへ入居しました。

 

夫婦の年金収入は月30万円ほど。長年の貯蓄もあり、入居時点で金融資産は約8,000万円ありました。子どもたちに迷惑をかけたくないという思いから、早めに住まいを移すことを決めたといいます。

 

「まだ元気なうちに入っておけば、環境にも慣れやすいと思ったんです」

 

選んだのは、入居一時金が高めの施設でした。館内はホテルのように整えられ、食事も充実。スタッフの対応も丁寧で、見学時の印象は非常に良かったといいます。

 

「ここなら安心して暮らせると思いました。費用は高いけれど、その分きちんと面倒を見てもらえるのだろうと」

 

入居時には、夫婦でまとまった一時金を支払い、月額費用も年金と貯蓄の取り崩しで十分に賄えると考えていました。

 

厚生労働省『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、老齢厚生年金の平均受給額は月15万1,142円です。森田さん夫妻の年金月30万円は平均的な高齢夫婦より余裕がある水準でした。

 

実際、入居後しばらくは穏やかな生活が続きました。朝食後に館内を散歩し、午後は読書や趣味の時間。月に数回は子どもたちが面会に来る。夫婦は「思い切って入居してよかった」と話していたそうです。

 

しかし、4年目に入ったころから、状況が少しずつ変わり始めました。

 

きっかけは、妻の体調変化でした。

 

それまで自立して生活していた妻が、転倒をきっかけに介助を必要とする場面が増えたのです。入浴、通院付き添い、居室内での見守り。日常の中で必要なサポートが少しずつ増えていきました。

 

森田さんは、当然それらも月額費用の範囲内で対応されるものだと思っていたといいます。

 

「高いお金を払っているのだから、必要な介護も含まれていると思っていました」

 

ところが、実際には一部のサービスが追加料金の対象でした。通院付き添い、規定回数を超える洗濯、個別対応、特別食、介護保険外の見守り。ひとつひとつは数千円から数万円でも、積み重なると月の負担は大きくなりました。

 

「請求書を見て、こんなに増えるのかと驚きました」

 

施設側からは、契約書や重要事項説明書に記載されている内容だと説明されました。たしかに書類には記載がありました。しかし、入居時には「通常の生活で必要な支援」と「追加料金になる支援」の境目を十分に理解できていなかったといいます。

 

「説明は受けていたのかもしれません。でも、自分たちは“だいたい全部込み”のように受け取ってしまっていました」

 

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