(※写真はイメージです/PIXTA)

内閣府『令和7年版 高齢社会白書』によると、65歳以上の一人暮らしは増加傾向にあり、65歳以上の女性の25.4%が一人暮らしであると推計されています。年金収入だけで生活する高齢者も多く、総務省『家計調査』では65歳以上の単身無職世帯の平均消費支出は月およそ15万円。家族との交流は心の支えになることもありますが、収入が限られるなかでは思わぬ負担になることもあります。

「本当は、遊びに来てほしい」でも…娘には言えない本音

美代子さんは、娘にはこの話をしていません。娘はときどき電話でこう聞きます。

 

「お母さん、翔太また行ってる?」

 

そのたびに、美代子さんは「うん、遊びに来るよ」とだけ答え、「お小遣いを渡している」とは言えないといいます。

 

「娘に気を遣わせたくないんです」

 

ただ、最近は孫が玄関のドアを開ける音を聞いたとき、少し複雑な気持ちになることもあるといいます。

 

祖父母が孫を支える関係は珍しいことではありません。しかし高齢期になると、事情は少しずつ変わってきます。収入が年金に限られるなかで、家族との関係の中に小さな負担が積み重なることもあるからです。

 

それでも美代子さんは、孫のことをこう話します。

 

「孫が嫌いなわけじゃないんです。むしろ、その逆です」

 

そして少し間を置いて、こう続けました。

 

「本当は、遊びに来てほしいんですよ。来なくなったら、それはそれで寂しいと思います」

 

孫の笑顔を見ると、やはり嬉しい気持ちが勝るのだといいます。ただ、帰ったあとにポチ袋の残りを数えると、現実も見えてきます。

 

「来月は、少し減らそうかな」

 

そう思いながらも、次に翔太くんが来たときには、また同じようにお金を渡してしまうかもしれません。

 

美代子さんは、ポチ袋をそっと引き出しに戻しました。その表情はどこか困ったようで、同時に優しさもにじんでいます。

 

孫の存在は喜びであり、ときに悩みでもあります。家族だからこそ距離の取り方が難しい――。美代子さんはそんな思いを胸に、今日も孫が訪ねてくる日常を過ごしています。

 

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