「本当は、遊びに来てほしい」でも…娘には言えない本音
美代子さんは、娘にはこの話をしていません。娘はときどき電話でこう聞きます。
「お母さん、翔太また行ってる?」
そのたびに、美代子さんは「うん、遊びに来るよ」とだけ答え、「お小遣いを渡している」とは言えないといいます。
「娘に気を遣わせたくないんです」
ただ、最近は孫が玄関のドアを開ける音を聞いたとき、少し複雑な気持ちになることもあるといいます。
祖父母が孫を支える関係は珍しいことではありません。しかし高齢期になると、事情は少しずつ変わってきます。収入が年金に限られるなかで、家族との関係の中に小さな負担が積み重なることもあるからです。
それでも美代子さんは、孫のことをこう話します。
「孫が嫌いなわけじゃないんです。むしろ、その逆です」
そして少し間を置いて、こう続けました。
「本当は、遊びに来てほしいんですよ。来なくなったら、それはそれで寂しいと思います」
孫の笑顔を見ると、やはり嬉しい気持ちが勝るのだといいます。ただ、帰ったあとにポチ袋の残りを数えると、現実も見えてきます。
「来月は、少し減らそうかな」
そう思いながらも、次に翔太くんが来たときには、また同じようにお金を渡してしまうかもしれません。
美代子さんは、ポチ袋をそっと引き出しに戻しました。その表情はどこか困ったようで、同時に優しさもにじんでいます。
孫の存在は喜びであり、ときに悩みでもあります。家族だからこそ距離の取り方が難しい――。美代子さんはそんな思いを胸に、今日も孫が訪ねてくる日常を過ごしています。
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