「突然始まった母の介護」長寿化で誰もが直面する介護リスク
『令和6年版 高齢社会白書』によると、日本人の平均寿命は男性81.05歳、女性87.09歳。今後さらに延び、令和52年には男性85.89歳、女性91.94歳に達すると見込まれています。
一方、健康寿命との間には差があり、この期間が介護や支援を必要とする可能性のある期間です。長寿は喜ばしい一方、日本社会は「人生のどこかで介護に関わる可能性が高い構造」に入っています。
「まさか、自分が介護で仕事を減らすことになるとは思っていませんでした」
そう語るのは首都圏で働く会社員の由美さん(仮名・52歳)です。
同居していた母(80歳)が自宅で転倒し、大腿骨を骨折。入院後に認知機能の低下が進み、要介護4と認定されました。
退院後は在宅介護となりましたが、日中はほぼ常時見守りが必要な状態です。
「トイレや移動も一人では難しくて、夜も何度も起きるんです。デイサービスのない日は、ほぼ一日中介護です」
厚生労働省『2022年 国民生活基礎調査』では、要介護4の41.2%が「ほとんど終日介護」と回答しています。由美さんの生活もまさにその状態でした。
当初、由美さんは仕事を続けながら介護をしていました。しかし現実は厳しいものでした。
突然の通院対応、夜間介助による睡眠不足、遅刻・早退の増加。
「上司は理解してくれていましたが、職場に迷惑をかけているのがつらくて…」
最終的に時短勤務へ変更。収入は月8万円減少しました。
在宅介護費用は月約4万円程度に収まっています。
在宅介護費は『在宅介護のお金と負担』(家計経済研究所)で平均5万円、中央値3.3万円とされています。由美さんの負担も統計的には平均的な水準です。
しかし実際の負担はそれ以上でした。
「お金より、時間と体力がなくなりました。自分の生活が消えていく感じでした」
