前回は、銀行が融資の可否を審査する5つのチェックポイントについて説明しました。今回は、決算書の数字の「操作」で使われる典型的な手法について見ていきます。

決算書こそが「会社の顔」だが・・・

③~⑤(第3回第4回)のチェックポイントは、会社の決算書がその資料になります。決算書こそが〝会社の顔〟ですから、少しでも格好よく見せたいと思うのは誰でも同じです。ところが、融資を受けたいあまりに、実際とかけ離れた数字で決算書を作るケースがあります。

 

融資を受けやすいように決算書を黒字化しようとする場合に、よく使われる手として、次のようなものがあります。

 

●架空の売上計上

架空の売上を計上して、実際よりも利益を大きく見せる方法です。いわゆる売上の水増しです。

 

●前倒し売上計上

決算を過ぎてから売り上げたものを、今期に前倒しして計上し、売上を大きくする方です。

付け焼き刃の決算対策は無意味

●買掛金の未計上

買掛金を翌期計上に先延ばしする方法です。買掛金とは簡単に言うと、ツケで物を買うこと。ツケで物を買ったら、そのときに計上しなくてはなりませんが、これを翌期に先延ばしします。そうすることで、今期の仕入れを先延ばししたことになり、利益が増えます。

 

●棚卸計上増額

棚卸商品を販売する目的で仕入れると、売れた分が「経費」になり、売れていない分は「在庫」になります。棚卸とは、在庫がどのくらいあるのか、確認して集計することです。

 

在庫というのは仕入れるためにお金は出ていきますが、いずれは売れてお金に換わります。つまり、運転資金が寝ている状態です。そのため、在庫の金額(棚卸額)によって決算書の利益の額が増減します。棚卸の額を大きくすると、仕入れの額が小さくなり、結果として売上総利益が大きくなります。

 

こうした決算書の数字の操作は、程度にもよりますが、悪質な場合は粉飾、虚偽になります。もちろん犯罪です。

 

犯罪レベルではなくても、数字を故意に操作したり、都合よくごまかしたりすることは絶対にやめましょう。金融のプロが見れば「これはウソだろう」「ちょっと都合よく数字を盛っているな」と容易に見破ることができます。付け焼き刃の決算対策は無意味と思ってください。

銀行に好かれる会社、嫌われる会社

銀行に好かれる会社、嫌われる会社

鈴木 みさ

幻冬舎メディアコンサルティング

人口減少とともに市場が縮小し、内需にかげりが見える昨今。働き手の不足による業務負担の増加など、小さな会社は厳しい状況に置かれています。実際に、9割の企業が起業後30年以内に消滅しているというデータもあります。そん…

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