相続税の納税は原則「金銭による納付」ですが、財産の大半が自社株式である場合、納税資金に苦慮することになります。今回は納税資金の捻出方法の一つとして「自社株式の物納」について見ていきます。

条件次第では「自社株式の物納」も利用可能

オーナー経営者の相続で、相続人が困ること、それは納税資金の問題です。財産の大半が自社株式である場合、現金化が難しいため、相続人は納税資金に苦慮することになります。

 

そこで、納税資金の捻出方法の一つとして考えられるのが「自社株式の物納」です。ただ、株式には定款によって譲渡制限が設けられているケースが一般的であり、どうしても物納する場合は定款を変更しなければなりません。自社株式の物納を検討する場合には、必ず専門家に相談しながら、実行が可能かどうか確認して進めるようにしましょう。

 

さて、相続税の納税は原則「金銭による納付」です。それが困難な場合に「延納」が認められ、いずれも困難な場合のみ、「物納」が認められます。さらに、国は物納財産について、「管理、処分をするのに適切なもの」でなければならないものとしています。

 

そのため、物納財産の種類ごとに順位をつけて、原則として、その順位でしか「物納」を認めないこととしています。「自社株式の物納」は、物納適格財産の第二順位である「株式」に該当するため、国債や不動産等がない場合に限り、物納にあてることができます。

配当金が適正に払えない場合、国の経営関与も・・・

「自社株式の物納」が認められるための条件はかなり大変ですが、条件を満たせば、相続人にとっては納税のための選択肢として、検討の余地はあるでしょう。また、物納が許可された場合、一番気になることは、国が経営に関与してくるかということです。この点に関して国は、商法上の特別決議が必要な場合や配当金が適正に支払われなかった場合等、一定の場合に限り、その権利を行使することとしています。

 

なお、物納した自社株式は、将来会社で買い戻すことも可能です。物納が認められれば、納税者は相続税の支払いに、その評価額での全額をあてることができ、会社についても、物納株式を計画的に買い取り、自社で保有することで支配関係を維持することができます。

 

ただし、会社が買い取る際の価額は、買い取り時の評価額のため、物納時より高くなる場合があります。これを利用して、物納後に株式の評価額を下げる対策を打つことで、物納時より低い価額で自社株式を買い戻すこともできます。

本連載は、2015年9月2日刊行の書籍『財を「残す」技術』 から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

財を「残す」技術

財を「残す」技術

齋藤 伸市

幻冬舎メディアコンサルティング

成功したオーナー経営者も、いずれは引退を考えなければいけない。そのときに課題になるのが、事業とお金をいかに残し、時代に受け継ぐかである。 保険代理店業を主軸として、オーナー社長の資産防衛と事業承継をコンサルティ…

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