会社により多くのお金を残すためには、貸借対照表(BS)のチェックを重視し、不良資産などを処分して法人税などの負担を減らすことがポイントのひとつです。

不良資産の処分にあたっては「証拠」を残す

会社の財務諸表のうち損益計算書(PL)をチェックしている経営者は多くいますが、貸借対照表(BS)を気にしている人は多くありません。PLには、一定期間の利益がどうであったかなど、会社の成績を示す数字が記載されていますから、経営者であれば気になるのが当然です。

 

それに対してBSは、ある時点の会社の資産や負債などの財政状態を示しているものです。会社の業績とは関係ありませんから、経営者にしてもそれほど興味を持つものではないのです。しかし、会社により多くのお金を残すためには、このBSをチェックすることが非常に重要です。BSで不良資産などを見つけ出し、処分することで法人税の負担などを減らすことができるのです。

 

最も多いのは、BSに記載されている「棚卸資産」に不良な資産が含まれているケースです。簡単にいえば、不良在庫です。特に業歴の長い会社ほど、不良在庫を抱えている場合が多いです。冷静に考えれば売れる見込みはないのですが、経営者にしてみれば、自分が売れると思って仕入れたわけですから、簡単にあきらめることはできません。

 

3年経っても4年経っても一つも売れていないのに、そのうち売れるかもしれないと考えて、長い間処分できないでいるのです。商品によっては倉庫代がかかっているものもあるでしょう。これでは価値がゼロどころか、会社にマイナスの影響を与えていることになります。このような不良資産はきちんと処分することが重要です。処分することによって特別損失が計上できますから、その分、利益を圧縮できます。結果的に法人税の負担を下げる効果があるのです。

 

ただし、不良在庫を処分する際にはコツがあります。廃棄処分をするのであれば、処分したという証拠を残しておくことです。そうしなければ、勝手に売却して現金を受け取ってごまかしているのではないかと税務当局に疑われます。

 

業者に処分してもらったのであれば、その際の写真を撮っておく、あるいは、業者が引き受けたときの資料を保管しておくなど、税務当局に指摘を受けたときに、証拠を提示できるようにしておく必要があります。

含み損を抱えた不動産も売却を検討

同様に、前払い費用がBSに掲載されている場合も少なくありません。たとえば、会社のオフィスを借りるときに支払う保証金や敷金がこれに該当します。不動産の賃貸契約によっては、借りた瞬間に保証金や敷金の一部が償却されるケースがあります。

 

契約した翌日に解約したとしても「保証金の30 %は返還しない」とされているような契約です。この場合、30%の金額については、戻ってくる可能性がないわけですから、償却をすることができます。

 

含み損を抱えた不動産をそのままにしている会社も多くあります。利益の出ている会社であれば、売却して含み損を吐き出すことによって、利益を圧縮することが可能です。グループ法人税制の適用を受けるような場合、損失は計上できませんが、経営者個人に売却するのは問題ありません。

 

たとえば、1億円で購入した土地が3000万円に値下がりしてしまっている場合、経営者個人に売却すれば、7000万円の損失を計上することが可能です。その後は会社が経営者と賃貸借契約を結んでその土地を利用することになります。

 

地代を経営者に支払ってもよいですし、無料で使用しても構いません。これを使用貸借といいます。個人が会社のものを利用することは認められていませんが、会社が個人のものを使用することは問題ないのです。このように資産価値のないものがBSに記載されていたら、それを処分していくことが節税につながります。

本連載は、2015年9月2日刊行の書籍『財を「残す」技術』 から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

財を「残す」技術

財を「残す」技術

齋藤 伸市

幻冬舎メディアコンサルティング

成功したオーナー経営者も、いずれは引退を考えなければいけない。そのときに課題になるのが、事業とお金をいかに残し、時代に受け継ぐかである。 保険代理店業を主軸として、オーナー社長の資産防衛と事業承継をコンサルティ…

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