(※写真はイメージです/PIXTA)

老後資金を考えるうえで、「年金と貯蓄で生活が維持できるか」は多くの家庭にとって重要な判断基準になります。総務省『家計調査(2024年)』によれば、高齢夫婦のみの無職世帯の可処分所得は月平均約22.2万円、消費支出は約25.6万円で、毎月約3.4万円の不足が生じているとされています。一方で、一定の貯蓄と平均以上の年金収入があれば「老後は安泰」と考える人も少なくありません。しかし実際の老後生活では、想定外の支出やライフイベントが重なり、家計設計に綻びが生じることもあります。

孫の笑顔と老後の現実のあいだで

退職から7年後、夫婦の金融資産は約2,200万円まで減っていました。年金収入の範囲で生活は維持できているものの、隆司さんは「減るスピードが想像より早い」と感じていました。

 

孫への支援は続いていました。恵子さんは「断るのは違う気がして…」と話します。ですが同時に、不安も頭をよぎるようになりました。

 

「自分たちの介護費用は足りるのか」「自分たちの老後と、子ども家族への支援。どこまでが適切なのか分からなくなってきました」

 

平均以上の年金、平均以上の貯蓄、持ち家——条件だけ見れば安泰に見える世帯でも、実際の老後は固定されたものではありません。孫、医療、住宅、家族支援といった支出が重なることで、家計の見通しは少しずつ変わっていきます。

 

そんな葛藤を抱えながらも、夫婦にとって孫の存在はかけがえのないものです。

 

週末になると孫が遊びに来ます。「じいじ、これ見て」。その声に隆司さんは自然と笑顔になります。しかしふと通帳残高が頭をよぎり、「この先どこまで支えられるのか」と考える瞬間もあるといいます。

 

それでも夫婦は「できる範囲でしてあげたい」と言います。孫との時間はかけがえのないものです。しかし同時に、老後資金という現実も静かに存在しています。

 

「十分なはずの老後」にも、見えにくい綻びが生じることはあるのです。

 

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