(※写真はイメージです/PIXTA)

結婚後に専業主婦となり、長年にわたり家計を配偶者の収入に依存してきた女性は少なくありません。子育てや家事を担う中、就労から離れた期間が長くなるケースも多く、総務省『労働力調査』でも、女性の就業率は30代前半でいったん低下し、その後40〜50代で再び上昇するいわゆる「M字カーブ」の傾向がみられます。しかし、配偶者の失業や離婚、別居などによって生活基盤が突然失われた場合、再就職のハードルは決して低くありません。

初めてのハローワーク…「54歳・未経験」

「パソコンもできません。資格もありません」

 

ハローワークの窓口でそう伝えると、紹介されたのは清掃や介護補助、スーパーの品出しといった求人でした。時給はおおむね1,020円前後。週3日勤務の場合、月収は6万円程度になると説明されたといいます。

 

それは、これまで毎月18万円で成り立っていた生活費の3分の1以下の水準でした。

 

「こんなに社会と切り離されていたんだと実感しました」

 

その後、真理子さんは弁護士相談も受けました。婚姻関係が継続している場合、別居中でも収入の多い側には生活費(婚姻費用)を分担する義務があります。民法760条に基づく制度で、家庭裁判所の算定表によって金額の目安が示されています。

 

夫の収入水準からすると、月10万〜14万円程度の婚姻費用が見込める可能性がある——そう説明を受けたといいます。

 

しかし真理子さんは、請求に踏み切ることができませんでした。

 

「裁判とか調停とか…そんなことしたくない。夫婦なのに」

 

結果として、婚姻費用の請求は行いませんでした。

 

現在、真理子さんはスーパーのレジのパートとして働いています。週4日勤務で、月収はおよそ9万円です。

 

「正直、生活は苦しいです。でも、自分のお金を初めて稼いだ実感がありました」

 

夫との別居は現在も続いており、生活費の支援は不定期に数万円が振り込まれる程度だといいます。

 

配偶者の収入に依存してきた期間が長いほど、離婚や死別、別居などによって生活基盤を失った際の経済的な脆弱性は大きくなりやすいものです。専業主婦からの再就業は、年齢が上がるほど正規雇用としての採用が難しく、非正規雇用や低賃金の仕事に就かざるを得ないケースも少なくありません。

 

それでも真理子さんは、パート勤務を続けながら簿記の通信講座を始めました。

 

「いつか、もう少し収入を上げたいから」

 

専業主婦歴30年。人生で初めての求職は54歳でした。遅い再出発のように見えるかもしれませんが、本人はこう語ります。

 

「やっと自分の人生を始めた気もするんです」

 

夫の別居という出来事は、彼女の生活を大きく揺るがしました。それでも今、真理子さんは「自分で生活を支える」という新しい現実の中に立っています。

 

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