使わなかった時間は戻らない
それから夫妻は外出を増やしました。近場の温泉や美術館、日帰り旅行。しかし夫は言います。
「体力が落ちているのを感じました」
長時間の移動が疲れる。階段がきつい。食事量も減った。妻も言います。
「元気な時期は過ぎていたんですね」
総務省『家計調査(2024年)』によれば、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の消費支出は平均約25.7万円ですが、年齢が上がるほど支出は減少する傾向があります。特に教養娯楽費や交通費は70代以降で大きく低下します。
これは経済的理由だけでなく、体力低下、外出機会減少、社会関係の縮小といった要因が影響しています。「使えるお金」があっても、「使える時間」は減っていくのです。
現在、夫妻の資産は約3,700万円。生活に不安はありません。それでも妻は言います。
「寂しいっていうより、静かすぎる感じ」
夫も同意します。
「何かが足りないわけじゃない。でも…何も増えなかった」
高齢期の資産は安心の基盤です。しかし同時に、人生の残り時間をどう過ごすかの資源でもあります。
金融資産が十分でも支出を抑え続ける世帯は少なくありません。不安回避は合理的な選択でもあります。
ただし、高橋さん夫妻が感じたのは、「使わなかった後悔は、使い過ぎの後悔とは性質が違う」という実感でした。どこまで守り、どこから使うか。その配分は、老後の満足度そのものに関わるのかもしれません。
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