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構造的要因による価格上昇の真実
「不動産価格の高騰」は、もはや一過性のトレンドではなく、業界構造そのものを変えつつあります。
筆者はこれまで、不動産会社においてマンション開発の現場に立ち、現在は投資家の視点から不動産市場と向き合っています。その両方を経験した立場から見ても、足元で起きている価格上昇は、感覚的なバブルとは明らかに質が異なります。首都圏を中心にマンション価格は高値圏で推移し、「そろそろ天井ではないか」という声も根強くあります。しかし結論から言えば、不動産価格は今後も中長期的に上昇基調が続く可能性が高いと考えています。その背景にあるのが、供給側の構造的な制約です。
筆者自身、かつてマンション開発事業に携わっていた際に、現場レベルではこの制約が年々厳しくなっていることを肌感覚として実感してきました。建築費は人件費・資材費の双方で上昇が続いており、特に職人不足は深刻です。加えて、マンション用地の取得競争は年々激化し、駅近や都心部では「そもそも土地が出てこない」状況が常態化しています。ディベロッパー各社は仕入れ価格の上昇を販売価格に転嫁せざるを得ず、新築マンション価格は押し上げられ続けています。開発現場では、事業採算が合わずに計画そのものが中止・延期されるケースも珍しくなく、結果として市場に供給される戸数が抑制される形となっています。
さらに、都市部への人口集中という大きな流れも変わっていません。人口減少社会にあっても、東京23区や主要政令都市では世帯数が底堅く、実需と投資需要が同時に存在します。供給が増えない一方で、需要が大きく崩れない以上、価格が大きく下落するシナリオは描きにくいのが現実です。
【東京23区の世帯数推移・見通し】
2015年:669.09万世帯
2020年:721.67万世帯
2025年:751.32万世帯(見通し)
2030年:771.03万世帯(見通し)
※出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)」(2019 年・2024 年推計)、東京都「東京都世帯数の予測」
開発事業に関わってきた立場から見ても、「価格が下がるから供給が増える」というより、「供給できないから価格が下がらない」という構造が、今後も続く可能性が高いと考えています。
高騰期を勝ち抜く二つの投資戦略
もっとも、筆者が強調したいのは、価格が上がっているからといって、「不動産投資は誰にとっても簡単な時代ではなくなった」という点です。
価格上昇と同時に金利も上昇局面に入り、不動産投資は明確な転換点を迎えています。この環境下では、不動産投資は「誰でも儲かる」フェーズから、「選別眼が試される」フェーズへと明確に移行しました。利回りは圧縮され、表面利回りだけを見た投資は成立しにくくなっています。
こうした高騰期における不動産投資の勝ち筋は、大きく二つあります。
一つ目は「利回り重視から資産価値重視への転換」です。どこでも値上がりする時代は終わり、今後は「都心」「駅近」といった希少性の高い物件に資金が集中します。23区内の中古マンションや、再開発が進むエリアなどは、価格変動局面でも値崩れしにくい代表例です。
二つ目は「堅実なキャッシュフローの確保」です。キャピタルゲインだけに依存する投資はリスクが高く、賃料水準が価格に見合っているか、満室経営が見込めるかといった基本の見直しが不可欠です。管理体制が良く、空室期間が短い物件は、高騰期においても安定した収益源となります。
加えて、金利上昇への備えも不可欠です。変動金利一辺倒ではなく、固定金利の活用や自己資金比率を高めるなど、融資戦略そのものの見直しが求められます。また、都心部であっても価格が実需から乖離した物件は、局所的な調整を受ける可能性があるため注意が必要です。
今後の不動産投資で勝率を高めるためには、「実需があるエリアか」「金融機関の評価が高いか」「資産価値を維持できる管理体制か」といった複数の視点でのチェックが欠かせません。不動産価格高騰期における本当の勝ち筋は、「資産価値が落ちにくい物件」を「金利上昇を織り込んだ安全な融資」で取得し、長期的な視点を持って安定運用することです。
開発現場と投資の両方を見てきた筆者自身、短期的な値動きを追う投資ほど再現性が低く、長く市場に残り続ける投資家ほど、この原則を徹底していると感じています。投機ではなく、選別と継続を前提とした投資こそが、これからの不動産投資に求められる姿勢になっていくでしょう。
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