なんとか賄えた“安い”老人ホームの費用
父の自宅を売って費用の足しにしようかと、不動産会社に見積りをお願いしましたが、現実は甘くありません。建物の老朽化ゆえ、解体して更地にしてから買い取るといわれました。解体費などの合計額は500万円。さらに、駅から離れた立地なので、1,000万円がいいところとのこと。正直、父があと何年生きるかわかりませんが、少しでも足しになるならと売却することに。差し引きすると、実家の売却で手元に残ったのはわずか500万円でした。
自営業だった父の年金は月約6万円。2024(令和6)年における80歳男性の平均余命は8.96年です。父は現在80歳。少しの蓄えと自宅を売った500万円、月6万円の年金――。平均余命で考えるのであれば、なんとか賄っていけそうでした。
3ヵ月後の再会…父の変わり果てた姿
Aさんは仕事が繁忙期に差し掛かったこと、さらに父が入居した老人ホームは交通の便が悪いことから、入居後の面会が遅れてしまいました。3ヵ月後、やっと訪問することができたAさんは、父の変わりように驚きが隠せませんでした。
もともと父は、現役時代に現場での力仕事が多かったため、恰幅もよく食欲旺盛でした。現役を引退しても、それは変わらなかったのです。利き手と利き足が麻痺したあとも、食が細くなることはなかったはずです。それがどうでしょう。Aさんの目には、まるで別人のような父の姿が映っています。わずか3ヵ月。骨が浮き出て、脂肪が落ち、痩せこけています。驚きを隠せず事情を聞くと、父は話しはじめました。
出される食事は常に「刻み食」でした。本来は普通食を食べられる状態でも、スタッフに声をかけると「ちょっと待ってください」と放置され、そのまま食事時間が終わってしまう。やっとの思いで普通食を希望したところ、「ほかの入居者と違う対応には月々の別料金がかかる」と突き放されたといいます。せっかく息子が探してきてくれた施設だから、別料金がかかることは避けたいと、父は、そのまま刻み食で我慢していたそうです。
ショックを受けたAさんが職員に父が激痩せしたことを伝えると、返ってきたのは冗談めかした信じがたい言葉でした。
「少しくらい痩せたほうが、お世話もしやすいですよ」

