「出ていってほしい」と思ってしまう罪悪感
3年が経った頃、夫婦はある不安に直面します。
「このまま一生同居になるんじゃないか」
年金生活の夫婦にとって、長男を養い続けることは想定外でした。
「自分たちが80歳になっても、まだ息子が家にいるのかと思うと…」
やがてA夫さんは、心の中で思うようになります。
「出ていってほしい」
しかし口には出せませんでした。
「親が子を追い出すなんて、世間からどう見られるか」「息子が本当に行き場を失ったらどうするか」
葛藤が続きました。
こうした問題は決して特殊なものではありません。中高年の子どもが親と同居し経済的に依存するケースは社会課題として指摘されています。いわゆる「8050問題」では、80代の親が50代の子を養う構図が典型例とされますが、40代でも同様の構造は珍しくありません。
総務省『家計調査(2024年)』によれば、高齢夫婦のみの無職世帯の平均可処分所得は月約22万円、平均支出は約25万円で、月約3万円の赤字です。多くの高齢世帯は貯蓄を取り崩しながら生活しています。そこに成人した子どもの生活費が加われば、老後資金は想定より早く減少する可能性があります。
A夫さん夫婦の場合、貯蓄2,500万円は平均以上ですが、「子を扶養する老後」は想定していませんでした。
「出ていってほしいって思う自分が嫌になるんです。でも…もう限界に近い」
老後資金の議論では、年金額や貯蓄額が注目されがちです。しかし現実には、家族との関係や扶養構造が生活の安定性を左右する大きな要因になります。
成人した子どもとの同居は、精神的な支えになる場合もあれば、逆に家計・生活・心理の負担となる場合もあります。
資産があっても、老後が穏やかに過ごせるとは限りません。「想定していなかった同居」が長期化することで、老後設計そのものが崩れてしまうケースもあるのです。
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