中国渡航自粛、「春節」がズレても客足は落ちない…能登地震から2年。〈金沢兼六園の1月〉数字が示した「答え」【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】

景気の予告信号灯としての身近なデータ(2026年2月13日)

中国渡航自粛、「春節」がズレても客足は落ちない…能登地震から2年。〈金沢兼六園の1月〉数字が示した「答え」【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
(※画像はイメージです/PIXTA)

実は、今の景気回復は「戦後一番長い」記録を更新しかけています。2026年7月には、あの「いざなみ景気」を抜く可能性が出てきました。その足音を裏付けるように、観光地では「底力」が見えています。札幌雪まつりは令和最多の客入りとなり、金沢兼六園も中国からの渡航自粛という逆風がありながら、2年連続で入園者が増えました。一方で、社会の景色は少しずつ変わっています。雇用が改善したことで、生活苦による「金融機関強盗」は年間たった2件に激減。その反面、特殊詐欺の被害は過去最悪となり、犯罪の主流が「力ずく」から「騙し」へとシフトしています。景気、観光、そして治安。4つのデータから、2026年の日本社会のリアルを、エコノミストの宅森昭吉氏が読み解きます。

GDPギャップ改善で「デフレ脱却景気」の命名も現実味

身近なデータは、26年7月に「いざなみ景気」を上回る74ヵ月連続の戦後最長の景気拡張期間になる可能性を示唆。

 

最近の景気と関連の深い身近なデータは、引き続き「但し書き付きの緩やかな回復」を示唆するものが散見されます。26年7月に「いざなみ景気」の73ヵ月間を上回る74ヵ月連続の戦後最長の景気拡張期間になる可能性が大きくなっています。GDPギャップが25年10~12月期からプラスが継続し、デフレ局面に戻ることがないと判断されるようなら「デフレ脱却景気」と名付けられてもよいのではないでしょうか。

 

出所:内閣府に加筆
[図表1]景気の基準日付 出所:内閣府に加筆
*平均は第2循環~第16循環の平均

26年さっぽろ雪まつり、観客253万人で「令和最多」を更新…

26年「さっぽろ雪まつり」観客数は253.9万人で前年比+9.1%の増加。令和になっての最多を記録。

 

今年も2月4日から11日の8ヵ間の日程で行われた、「さっぽろ雪まつり」の全体の観客数は253.9万人で前年比+9.1%の増加になりました。令和になって、最多の観客数です。メイン会場の大通会場は192.6万人、前年比+8.8%の増加、25年は前年比減少だったつどーむ会場が61.3万人、+10.0%の増加でした。

 

令和の「さっぽろ雪まつり」の全体の観客数は20年(令和2年)の157.5万人をボトムに、コロナ禍で会場開催が中止になった21年、22年を挟んで、23年175.0万人、24年238.9万人と増加したあと、25年は、つどーむ会場の減少で232.7万人と減少していました。26年(令和8年)の253.9万人は令和で最高人数。19年(平成31年)の273.7万人以来の水準です。

 

出所:札幌観光協会
[図表2]さっぽろ雪まつり 観客実績 出所:札幌観光協会
※令和3年/令和4年は、コロナで会場での開催中止、オンラインで開催。令和5年は大通会場のみ

中国の渡航自粛や春節ズレの逆風でも…1月の金沢・兼六園入園者、地震後2年連続で増加

1月の金沢兼六園・入園者数は、能登半島地震発生で落ち込んだ24年のあと、25年・26年と2年連続で前年同月比増加。

 

24年元日の能登半島地震の発生から2年と2ヵ月近くが経ちました。金沢兼六園の入園者は、能登半島地震の影響で24年1月は7.1万人、前年同月比▲38.7%と落ち込んでいます。24年は桜の開花で入園者が倍の100%に増えた4月を除いて、12月までの11ヵ月で前年同月比減少となりました。

 

25年1月の金沢兼六園の入園者は14.1万人、地震の影響の反動で前年同月比+97.6%と9ヵ月ぶりの増加。また、地震前の23年1月に比べると+21.2%の増加と、地震の影響を跳ね返したかたちです。

 

ただし、25年の春節の連休は1月28日(火)~2月4日(火)までの8日間で、24年の春節の連休2月10日(土)~17日(土)より早く、1月の前年同月比を高めている面を考慮する必要があります。26年の春節の連休(中国本土)は2月15日(日)~2月23日(月)までの9日間なので、中国の日本への渡航自粛要請と併せ1月の前年同月比にはマイナスに働いたはずです。

 

そうしたなかでも、25年1月の金沢兼六園の入園者は14.6万人、前年同月比+3.2%と増加になりました。入園者数の前年同月比増加は、25年1月以降、お花見の影響で減少となった25年4月を除き、25年中は前年同月比増加が継続しました。 

 

出所:金沢城兼六園管理事務所
[図表3]金沢兼六園入園者数 出所:金沢城兼六園管理事務所

25年の金融機関強盗が「年間2件」の極少水準に至った背景

25年の金融機関店舗強盗事件発生件数は2件と23年・24年の11件を下回る極めて少ない数字に。

 

生活に行き詰って犯行におよぶことが多い金融機関店舗強盗事件発生件数は、完全失業率との相関が高く、2006年~25年まで20年間の相関係数は0.674です。25年の完全失業率は2.5%だったことに代表されるように近年は雇用環境が改善していることから、金融機関店舗強盗事件発生件数も少ないようです。

 

出所:日本防災通信協会、総務省
[図表4]金融機関店舗強盗事件発生件数、完全失業率推移 出所:日本防災通信協会、総務省

 

最近の金融機関店舗強盗事件発生件数は22年17件のあと、23年は11件と減少しました。24年は9月に4件と6年半ぶりの多さになったため年間合計の数字の悪化が一時懸念されましたが、結果は11件で前年比横這いにとどまりました。25年は1月、2月が各1件ずつの発生で、そのあと3月から12月まで10ヵ月連続で0件になりました。

 

出所:日本防災通信協会調べ「防災通信」
[図表5]金融機関店舗強盗事件・発生の業態別推移 出所:日本防災通信協会調べ「防災通信」

25年の刑法犯77.4万件…特殊詐欺被害は過去最悪に

25年の刑法犯認知件数は77.4万件、4年連続増加でコロナ禍前の19年上回る。特殊詐欺被害が過去最悪に。

 

警察庁の犯罪情勢統計によると、刑法犯認知件数は前年比+4.9%の77万4,142件で、戦後最少だった21年56.8万件から4年連続増加でコロナ禍前の19年74.9万件を上回りました。悪知恵を使って行うことが多そうな、特殊詐欺とSNS型投資・ロマンス詐欺の増加が著しく、被害件数、被害額とも過去最悪になりました。生活苦などからやむにやまれぬ状況で行われることが多い金融機関店舗強盗の減少と、対照的な動きです。

 

25年の特殊詐欺の認知件数は、2万7,758件、前年比+31.9%、被害額は、1,414億円、前年比+96.7%でした。認知件数の前年同月比は24年7月以降25年12月まで18ヵ月連続の増加です。

 

25年のSNS型投資詐欺の認知件数は 9,538件、前年比+48.7%、被害額は 1,275億円、前年比+46.3%と認知件数、被害額ともに前年に比べて増加しました。

 

25年のSNS型ロマンス詐欺の認知件数は 5,604件、前年比+46.5%、被害額は552億円、前年比+37.8%と、こちらも認知件数、被害額とも前年比増加になりました。

 

出所:警察庁
[図表6]刑法犯総数(認知件数) 出所:警察庁

 

※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。

 

 

宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)

三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。

 

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