1年超続いた「物価低下トレンド」が崩壊…イラン情勢の緊迫化でDIは88.8へ急騰
消費者マインドアンケート調査は5段階の評価の回答なので、景気ウォッチャー調査と同じ手法で物価上昇判断DIをつくることができます。物価上昇判断DIは、調査開始の16年9月から22年1月までは60台・70台で安定推移していました。しかし、ロシアがウクライナ侵攻した月の22年2月調査以降、物価上昇判断DIは80台・90台で、物価が上昇するという見方が強い状況が継続しています。
22年10月に90.4をつけたあと80台後半での推移、23年6月に90.7をつけ、そこから振幅をともないつつ24年9月の80.3まで一旦低下したあと、反転上昇傾向に。25年2月に90.2と20ヵ月ぶりの90台を記録しました。
25年3月以降は80台で推移しています。前月の26年2月は82.1と、25年11月に並ぶ低水準で、25年2月の90.2からの振幅を伴いつつ緩やかながらの下降傾向だったものの、2月末からのイラン情勢緊迫化で3月の水準は88.8まで上昇。25年2月の90.2に次ぐ水準になったことで、1年超かけた緩やかな低下局面が崩壊しました。
回答の内訳比率をみると、26年2月は「上昇する」が47.1%で、25年12月55.2%、26年1月48.5%と2ヵ月連続で低下。ところが26年3月では、「上昇する」が60.4%でまで急上昇し、25年4月の62.9%以来11ヵ月ぶりの水準になってしまいました。
改善傾向から一転…暮らし向きDIは34.5まで低下
暮らし向き判断DIは、2025年6月に30.4と5月の28.0から30台に上昇。7月33.6のあと、8月は38.2と24年12月の39.0以来の水準になりました。しかし、9月は32.0へと5ヵ月ぶりに低下したものの、20台に戻ることはなく30台は維持しました。10月35.0、11月37.7、12月39.4、1月40.1へと上昇。26年1月は24年9月41.0以来16ヵ月ぶりの40台に戻り、2月はさらに40.4へと5ヵ月連続で上昇しました。2ヵ月連続40台は、24年3月40.0、4月43.4以来でした。
しかし、3月の暮らし向き判断DIは34.5と2月40.4から低下し、25年9月32.0以来6ヵ月ぶりの低い水準になってしまいました。
エネルギー高騰が暮らしを直撃…物価DI急騰と生活実感急落の連鎖
消費者マインドアンケート調査の暮らし向き判断DIと物価上昇判断DIの相関係数は、16年9月から21年8月までの最初の5年間は0.01と無相関でしたが、21年9月から26年3月までの最近の4年7ヵ月間では▲0.6568のマイナスで逆相関の関係があります。
26年2月では物価上昇判断DIは82.1まで低下し、22年1月79.5以来の70台まであと2.2ポイントまで迫っていましたが、3月は88.8に急上昇。それに伴い、暮らし向き判断DIが34.5と3ヵ月ぶりに40台を割り込みました。
なお、将来的に日銀が目指す物価目標である消費者物価指数前年比+2%が安定的に実現した場合、物価上昇判断DIは全員が「やや上昇」を選択するときの75.0程度になることが期待されます。
前年比2割安…野菜・果実の「大幅下落」
3月上旬の主要青果物卸売市場の卸値の平均価格の前年比は、野菜が▲20.1%、果実が▲14.8%になりました。2月上旬の主要青果物卸売市場の卸値の平均価格の前年比は、野菜が▲10.8%、果実が▲12.6%だったので1ヵ月でマイナス幅が拡大しました。
全国消費者物価指数では生鮮食品の前年同月比が、25年12月、26年1月、26年2月と3ヵ月連続前年同月比マイナスになっています。
コメ5キロの平均価格、28週ぶりに「4,000円」を割り込む
スーパーでのコメ価格は、直近3月9日~15日の週で5キロの平均価格が3,980円に。28週ぶりに4,000円台を割り込みました。前年比は3月9日~15日の週で▲4.6%、前週3月2日~8日の週の▲1.6%に続いて2週連続で前年比マイナスになっています。
主食の不安は和らぐも嗜好品が直撃…コメのピークアウトとコーヒーの異常高騰
2月全国消費者物価指数・米類の前年同月比は+17.1%。24年6月の+12.3%以来の伸び率は鈍化しました。最大の前年同月比は25年5月の+107.1%でした。ただし、コーヒー豆は熱波や干ばつという異常気象の影響で世界的に高騰しています。2月全国消費者物価指数・コーヒー豆の前年同月比は+51.4%で2ヵ月連続上昇しています。
190円を突破、ガソリン価格が歴史的高値に…暫定税率廃止後から急反転
2025年末に約50年にわたって続いてきたガソリン税の暫定税率が廃止されたことから、26年に入ってのレギュラーガソリンの全国平均価格は前年比で2ケタのマイナスが続いていました。
3月9日時点のレギュラーガソリンの全国平均価格は、161.8円/Lで25年3月10日時点のレギュラーガソリンの全国平均価格184.1円/Lに比べ前年比▲12.1%と、前年比は25年10月14日の調査から21回連続でマイナスになっていました。しかし、3月16日時点では190.8円/Lを付け、過去最高を更新。前年比は+3.4%とプラスです。
政府はイラン情勢に伴う価格上昇を受け、3月19日からガソリンの補助金を開始しました。レギュラーガソリンの店頭価格を1リットルあたり170円/L程度に抑えるようにしているので、25日に発表される3月23日のレギュラーガソリンの全国平均価格は170円/Lなら、前年比は▲7.9%程度のマイナスに転じるでしょう。
イラン情勢を織り込んでも「実質賃金プラス」が維持される根拠
26年2月消費者物価指数・生鮮食品除く総合の前年同月比は+1.6%になりました。25年11月+3.0%、12月+2.4%、26年1月+2.0%から鈍化してきました。26年2月からは電気・ガス料金補助の影響が出て低下しています。
実質賃金は、現在、従来の「消費者物価指数・持家の帰属家賃を除く総合」で実質化するものと、各国公表による主要国の実質賃金と比較するために「消費者物価指数・総合」で実質化するものと2種類あります。
25年12月前年同月比では、前者はまだ▲0.1%とマイナスが続いていましたが、後者は+0.3%とプラスに転じました。26年1月速報値・前年同月比では、前者は+1.4%、後者は+1.6%とともにプラスに転じました。実質化に使う「消費者物価指数・持家の帰属家賃を除く総合」が+2.0%、「消費者物価指数・総合」が+1.7%と12月からともに0.4ポイント低下したこともプラス化要因でしょう。
26年2月では実質化に使う「消費者物価指数・持家の帰属家賃を除く総合」が+1.4%、「消費者物価指数・総合」が+1.5%と1月からそれぞれ0.6ポイント低下、0.2ポイント低下しています。名目賃金は26年1月+3.0%でした。2月の実質賃金もプラスが期待されます。
一部新聞に『遠のく実質賃金プラス定着 「イラン情勢で物価高」民間予想』という記事が3月24日に出ました。
米国・イスラエルによるイラン攻撃に伴って原油価格が高騰して、輸送コストなどが上がり、さまざまな商品価格が上昇するなどの懸念を背景に、民間エコノミスト5人による26年度物価見通しの上方修正をよりどころに記事を書いているようです。
しかし、名目賃金が1月の+3.0%程度の前年同月比で推移するなら、実質賃金のプラスが定着しそうにないとはいえないでしょう。不透明なイラン情勢の混乱ですが、現時点でどうなるかはわかりません。イラン情勢の混乱がかなりの長期になると断定的にみて、人々の不安を煽る「実質賃金プラスの定着が遠のく」とみるのは、まだ早すぎる評価のようで気になったところです。
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
金融資産1億円以上の方のための
本来あるべき資産運用
>>3/31(火)LIVE配信<<











