【4月の消費者マインドアンケート調査】
物価上昇判断DIは統計史上最高水準、中東情勢緊迫化が影響。暮らし向き判断DIは7カ月ぶりの水準低下でも、意外と底堅い印象に【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】

景気の予告信号灯としての身近なデータ(2026年4月22日)

【4月の消費者マインドアンケート調査】 物価上昇判断DIは統計史上最高水準、中東情勢緊迫化が影響。暮らし向き判断DIは7カ月ぶりの水準低下でも、意外と底堅い印象に【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
(※画像はイメージです/PIXTA)

4月の消費者マインドアンケート調査からは、コメ・野菜価格やガソリン価格の推移と人々が感じ取っている景況感など、生活実態に基づくさまざまなデータが浮かび上がってきます。本稿では、4月の消費者マインドアンケート調査から、2026年春の経済情勢をエコノミストの宅森昭吉氏が読み解きます。

物価上昇判断DI、1年超かけた「緩やかな低下局面」が崩壊

26年4月91.3。2月82.1、3月88.8と2ヵ月連続上昇。25年2月の90.2以来14ヵ月ぶりの90台。

 

消費者マインドアンケート調査は5段階評価の回答なので、景気ウォッチャー調査と同じ手法で物価上昇判断DIをつくることができます。物価上昇判断DIは、調査開始の16年9月から22年1月までは60台・70台で安定推移していましたが、ロシアがウクライナ侵攻した月の22年2月調査以降、物価上昇判断DIは80台・90台で、物価が上昇するという見方が強い状況が継続しています。

 

22年10月に90.4をつけたあと80台後半での推移、23年6月に90.7をつけ、そこから振幅をともないつつ24年9月の80.3まで一旦低下したあと、反転上昇傾向を示し、25年2月に90.2と20ヵ月ぶりの90台を記録しました。

 

25年3月以降26年3月まで80台で推移しました。26年2月82.1で25年11月に並ぶ低水準で、25年2月の90.2からの振幅を伴いつつ緩やかながらの下降傾向でした。2月末からの中東情勢緊迫化で4月の水準は91.3と史上最高水準まで上昇、1年超かけた緩やかな低下局面が崩壊しました。

 

※「上昇する」から「低下する」までの5段階の回答を景気ウォッチャー調査と同様にDI作成した。 (出所)内閣府「消費者マインドアンケート調査」
[図表1]物価上昇判断DI ※「上昇する」から「低下する」までの5段階の回答を景気ウォッチャー調査と同様にDI作成した。
(出所)内閣府「消費者マインドアンケート調査」

 

回答の内訳比率をみると、26年2月は「上昇する」が47.1%で、25年12月55.2%、26年1月48.5%と2ヵ月連続で低下していましたが、26年3月では「上昇する」が60.4%、4月では67.9%へと上昇し、史上最高水準になってしまいました。

※一番右の欄の数字は、上が景気ウォッチャー調査と同様に加重平均して求めたDI。同じ欄の下の数字は、「上昇する」と「やや上昇する」の割合の単純合計。 (出所)内閣府
[図表2]消費者マインドアンケート調査(試行):物価見通し(1年後)の集計結果推移 ※一番右の欄の数字は、上が景気ウォッチャー調査と同様に加重平均して求めたDI。同じ欄の下の数字は、「上昇する」と「やや上昇する」の割合の単純合計。
(出所)内閣府

暮らし向き判断DI、4月の33.6は概ね平均並みで底堅い景況感

26年4月の暮らし向き判断DIは33.6と3月34.5から低下、25年9月32.0以来7ヵ月ぶりの低い水準だが、意外と底堅い。

 

暮らし向き判断DIは、2025年6月に30.4と5月の28.0から30台に上昇しました。7月33.6のあと、8月は38.2と24年12月の39.0以来の水準になりました。しかし、9月は32.0へと5ヵ月ぶりに低下しました。

 

しかし、20台に戻ることはなく30台は維持しました。10月35.0、11月37.7、12月39.4、1月40.1へと上昇し、26年1月は24年9月41.0以来16ヵ月ぶりの40台に戻り、2月はさらに40.4へと5ヵ月連続で上昇しました。2ヵ月連続40台は、24年3月40.0、4月43.4以来でした。しかし、3月の暮らし向き判断DIは34.5と2月40.4から低下、4月は33.6へとさらに低下し、25年9月32.0以来7ヵ月ぶりの低い水準になりました。

 

但し、物価上昇判断DIとの相関が高まった21年9月から26年4月までの最近の4年8ヵ月間での暮らし向き判断DIも平均は33.9なので、4月の33.6という数字は概ね平均並みで、物価上昇判断DIが最高水準になった月としては底堅い景況感と言えると思われます。

暮らし向き判断DIと物価上昇判断DI、近年は逆相関の関係に

26年4月調査、2月末からの中東情勢によるエネルギー価格の高騰懸念などで、物価上昇判断DIが上昇し、暮らし向き判断悪化に。

 

消費者マインドアンケート調査の暮らし向き判断DIと物価上昇判断DIの相関係数は16年9月から21年8月までの最初の5年間は0.01と無相関でしたが、21年9月から26年4月までの最近の4年8ヵ月間では▲0.6442のマイナスで逆相関の関係にあります。26年2月では物価上昇判断DIは82.1まで低下し、22年1月79.5以来の70台まであと2.2ポイントになっていましたが、3月は88.8に急上昇し、4月は91.3にさらに上昇しました。それに伴い、暮らし向き判断DIが34.5と3ヵ月ぶりに40台を割り込み、4月は33.6とさらに低下しました。

 

なお、将来的に日銀が目指す物価目標である消費者物価指数前年比+2%が安定的に実現した場合、物価上昇判断DIは全員が「やや上昇」を選択するときの75.0程度になることが期待されます。

 

(出所)内閣府 ※相関係敖:▲0.6442
[図表3]消費者マインドアンケート調査(最近4年8ヵ月間) (出所)内閣府
※相関係数:▲0.6442

主要青果物卸売市場の卸値の平均価格、マイナス基調も幅は縮小

4月上旬の主要青果物卸売市場の野菜・果実の卸値の平均価格は前年比下落続く。

 

4月上旬の主要青果物卸売市場の卸値の平均価格の前年比は、野菜が▲6.5%、果実が▲4.8%になりました。3月上旬の主要青果物卸売市場の卸値の平均価格の前年比は、野菜が▲20.1%、果実が▲14.8%だったので前年比マイナス基調は続いていますが、1ヵ月でマイナス幅が縮小しました。

 

(出所)農水省
[図表4]野菜・果実卸値の推移(主要青果物卸売市場) (出所)農水省

スーパーでのコメ平均価格、高騰局面を脱し落ち着いた状況に

スーパーでのコメ価格は5週連続で5kgの平均価格が3,000円台。前年比は6週連続マイナスに。

 

スーパーでのコメ価格の平均価格は、25年6⽉以降、随意契約による政府備蓄⽶の流通により低下した後、新⽶の出回り等を背景に上昇、9⽉以降は4,000円/5kgを上回る水準で推移しましたが、3月9日~15日の週で5kgの平均価格が3,980円/5kgと28週ぶりに4,000円台を割り込みました。4⽉6⽇~12日の週の平均価格は、3,873円/5kgで低下しました。5週連続で5kgの平均価格が3,000円台です。

 

(出所)農水省
[図表5]スーパーでのコメの全平均販売価格(全POSデータ)2025年~2026年 (出所)農水省

 

スーパーでのコメ価格の平均価格の前年同週比は、3月2日~8日の週で▲1.6%と前年比マイナスになりましたが、その後、4⽉6⽇~12日の週で、▲8.2%まで6週連続でマイナスになっています。

 

(出所)農水省データから試算
[図表6]2026年のコメ価格:前年同週比(%) (出所)農水省データから試算

レギュラーガソリン全国平均価格、前年比は4回連続でマイナスに

4月13日時点のレギュラーガソリンの全国平均価格は、167.5円/L、前年比は▲10.2%。3月16日時点では190.8円/Lで過去最高を更新。前年比は+3.4%と一時的にプラス。3月19日以降政府の補助金で前年比はマイナスに。

 

2025年末に約50年にわたって続いてきたガソリン税の暫定税率が廃止されたことから、26年に入ってのレギュラーガソリンの全国平均価格は前年比で2ケタのマイナスが続いていました。しかし、一時的に、3月16日時点では190.8円/Lで過去最高を更新し、前年比は+3.4%と一時的にプラスに転じました。政府は中東情勢に伴う価格上昇を受け、3月19日からガソリンの補助金を開始しました。レギュラーガソリンの店頭価格を1リットルあたり170円/L程度に抑えるようにしているので、前年比はマイナスに転じ、直近の4月13日時点のレギュラーガソリンの全国平均価格は、167.5円/Lで、前年比▲10.2%となりました。前年比は3月23日の調査から4回連続でマイナスになりました。

 

(出所)資源エネルギー庁
[図表7]2024年11月~2026年4月レギュラーガソリン前年比 (出所)資源エネルギー庁

 

(出所)資源エネルギー庁
[図表8]2024年11月~2026年4月レギュラーガソリン価格 (出所)資源エネルギー庁

入着原油価格、足元の統計は「まだ落ち着いたまま」

中東情勢緊迫化から原油価格急騰と報じられるが、3月や3月下旬の貿易統計・入着原油価格(原粗油)は前年比マイナス。

 

中東情勢緊迫化から原油価格急騰と報じられていますが、足元の統計はまだ、落ち着いています。3月の貿易統計・入着原油価格(原粗油)は前年同月比▲9.5%のマイナスでした。概ねホルムズ海峡経由の原油ではなくなった3月下旬でも入着原油価格の前年同旬比▲6.4%と依然マイナスです。

 

(出所)財務省
[図表9]入着原油価格・前年同月比(%)推移 (出所)財務省

足元の実際の物価は「落ち着いている感」あり

3月は実質賃金前年比プラス継続か。「実質賃金プラス定着、遠のく」というほどの状況とはまだ言えない。

 

中東情勢の行方次第では先行きインフレが強まる可能性がありますが、足元は昨年懸念されていた、コメや生鮮野菜・生鮮果物の価格は比較的落ち着いています。政府の補助金のおかげでガソリン価格も170円/L程度で推移していて、前年比はマイナスです。3月の貿易統計・入着原油価格(原粗油)は前年同月比マイナスで、3月下旬でもマイナスです。こうしたことから足元の実際の物価は落ち着いている感があります。

 

実質賃金は、現在、従来からの「消費者物価指数・持家の帰属家賃を除く総合」で実質化するものと、各国公表による主要国の実質賃金と比較するために「消費者物価指数・総合」で実質化するものと2種類あります。25年3月分から実質賃金の算出に消費者物価・総合を使用する新方式も加わりました。25年12月前年同月比では、前者はまだ▲0.1%とマイナスが続いていましたが、後者は+0.3%とプラスに転じました。

 

26年1月・前年同月比は、前者は+0.7%、後者は+1.0%とともにプラスで、26年2月速報値では、実質賃金・前年同月比は+1.9%に増えました。2ヵ月連続のプラスです。名目賃金を示す現金給与総額は前年同月比+3.3%の増加です。デフレーターの2月消費者物価指数(持家の帰属家賃除く総合)の上昇率は+1.4%でした。また、2月消費者物価指数・総合の前年同月比は+1.3%だったので、新方式の2月実質賃金は+2.0%の増加になりました。3月の実質賃金もプラスが期待されるところです。

 

(出所)厚生労働省
[図表10]実質賃金指数・前年同月比 (出所)厚生労働省

 

※ 本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。

 

 

宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)

三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。

 

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