イラン攻撃・資源価格の急上昇を背景に、景況感は大幅悪化
3月の「景気ウォッチャー調査」では、イスラエルと米国によるイラン攻撃やそれに伴う資源価格の急上昇を背景に、景況感が大幅に悪化しました。現状判断DI(季節調整値)は前月差6.7ポイント低下の42.2となりました。ロシアのウクライナ侵略が始まった22年2月の37.7以来の低さです。
また、現状水準判断DI(季節調整値)は前月差3.8ポイント低下の43.7となりました。現状判断DIよりは1.5ポイント高い水準になります。
先行き判断DI(季節調整値)は、前月差11.3ポイント低下の38.7となりました。新型コロナウイルス禍だった2020年12月の37.7以来の低水準です。11.3ポイントの落ち込み幅は20年11月の11.5ポイント以来の大きさでした。
なお、原数値でみると、現状判断DIは前月差3.5ポイント低下の44.7となり、先行き判断DIは前月差12.2ポイント低下の39.6となりました。
3月の調査結果に示された景気ウォッチャーの見方に関する内閣府の判断は、これまでの「景気は、持ち直している」から「景気は、中東情勢によるマインド面の下押しを背景に、このところ持ち直しの動きに弱さがみられる」に変わりました。但し「持ち直しの動き」というワードはそのまま用いられました。
また、先行きについては、5カ月続いた「価格上昇の影響等を懸念しつつも、持ち直しが続くとみられる」から「中東情勢による不透明感がみられる」になり、「持ち直しが続く」が消えました。
景気ウォッチャー調査の現状判断DIも、先行性を持つ指標のひとつ
景気ウォッチャー調査の発表日の日経平均株価の終値で売り買いするという模擬売買を2000年の調査開始以降、現状判断DI(その季節調整値の公表が始まってからはその時点の季節調整値で判断)を使って行ってきています。下落基調だった現状判断DIが前月に比べて1ポイント以上(統計的に有意な変化と考えて)上昇した時に買建てに、上昇基調だった現状判断DIが前月に比べて1ポイント以上低下した時に売建てにするというものです。
25年6月9日に38,088円57銭で買建てていましたが、26年3月9日まで1ポイント以上低下することがありませんでした。4月8日に前月差6.7ポイント低下となったので、その日の終値56,308円42銭で、売建てに転じました。上昇幅は18,219円85銭になりました。これで、92回の売買で48勝44敗。累計変化幅は+33,598円10銭になりました。
株価は景気の先行指標のひとつですが、景気ウォッチャー調査の現状判断DIも先行性を持つ指標のひとつであると考えられると思います。
沖縄の現状判断DI、12カ月連続で50超
地域別にみた3月の現状判断DIでは沖縄が2月の55.9から4.4ポイント低下しましたが、51.5と地域別では唯一50台となり、12カ月連続で景気判断の分岐点50を上回りました。先行き判断DIでは3月は多くの地域が30台という低水準に落ち込んだ中、沖縄は2月から10.0ポイント低下しましたが51.8になりました。21年9月以降55カ月連続50超が続いています。
「中東」「イラン」に関するコメントが大きく増加
前回の2月景気ウォッチャー調査の先行き判断DI(季節調整値)では、調査期間の最終日28日にイスラエルと米国によるイランへの攻撃が行われました。多くの景気ウォッチャーは平日である27日(金)までに回答したのでしょうが、28日(土)に回答した景気ウォッチャーの中には、イラン情勢に関し早速、先行き判断でコメントした人が現れました。1月にゼロだった「中東」や「イラン」に関するコメントをした景気ウォッチャーが2月では各々4人、6人となりました。「中東」関連先行き判断DI33.3、「イラン」関連先行き判断DI25.0でした。
注目された3月の景気ウォッチャー調査では現状、先行きとも、中東情勢、イラン情勢という使い方で「中東」「イラン」に関するコメントが大きく増えました。なお、イスラエル情勢と言われないことから「イスラエル」のコメントは引き続きありませんでした。
3月の「中東」関連現状判断DI31.8、「イラン」関連現状判断DI30.0でした。コメントした景気ウォッチャーは各々146人、20人でした。一方、「中東」関連先行き判断DI27.7、「イラン」関連先行き判断DI30.6でした。コメントした景気ウォッチャーは各々355人、27人になりました。
また、「不安」に関するコメントをした景気ウォッチャーは現状64人、先行き146人でした。関連判断DIは現状32.4、先行き32.5でした。2月に「不安」に関するコメントをした景気ウォッチャーは現状12人、先行き26人だったことからみると、中東情勢、原油高の先行きへの不安が高まったことが、わかります。
甲信越の職業安定所の職員の現状に関するコメントとして、「中東情勢の緊張感が増しており、原材料や光熱費の高止まりが危惧される。一方、経済対策の迅速さなどが奏功し、直ちに足下の景況感が悪化する状況ではない」というものがありました。
「価格or物価」関連判断DI、それぞれ大きく低下
前回2月の「価格or物価」関連判断DIは、現状が46.3、先行き判断DIは46.2で物価の落ち着き傾向を反映し、それなりに高めの水準になっていましたが、3月の「価格or物価」関連判断DIは各々、34.1、31.7と大きく低下しました。コメントしたウォッチャー数を先行き判断でみると、2月の266人から3月は541人に大幅に増加し、DIの低下と回答人数の増加の両面で、景況感の足を引っ張りました。
ガソリン暫定税率(25.1円/ℓ)は2025年12月31日に正式に廃止されました。1月・2月の「ガソリン」関連DIは現状、先行きとも50超になり、景況感の押し上げ要因になっていました。しかし、3月の「ガソリン」関連DIは現状30.7、先行き28.6に大幅に悪化しました。また、「ガソリン」に関してコメントしたウォッチャーは大幅に増加しました。
ガソリン価格は政府の補助金で170円/ℓ程度に維持される状況ですが、現状判断のコメントで、九州の衣料品専門店の店長が、「イラン情勢の影響により、ガソリン価格を始め価格情勢が不安定であるため、購買心理が抑制され、店の売上が先行き不透明となっている」というものがありました。
「気温」関連現状判断DI、2カ月連続50超
3月の「気温」関連現状判断DIは52.8と2カ月連続で、判断の分岐点の50超になりました。同先行き判断DIは58.9となり、3カ月連続で、判断の分岐点の50超になりました。景況感の下支え要因になったことがわかります。
「外国人orインバウンド」関連判断DI、分岐点50前後で推移
26年に入ってからの「外国人orインバウンド」関連判断DIは現状、先行きとも景気判断の分岐点の50前後で推移しています。3月の現状判断DIは50.7と4カ月ぶりに50超になった一方、先行き判断DIは45.8で3カ月ぶりに50割れになりました。
「中国」関連判断DIは、25年10月ではまだ、現状、先行きともコメント数は1ケタと、通常の状態でしたが、11月になると、現状が45人、先行きが125人と急増しました。12月は、現状が53人と増加しましたが、先行きが68人と急減しました。その後両者の低下傾向は26年3月まで続いています。3月は、現状32人、先行きが13人になりました。3月のDIは現状46.1、先行きは44.2とともに判断の分岐点50を割り込みましたが、全体のDIの水準を上回りました。
6月12日開幕「サッカーワールドカップ」がもたらす影響は?
FIFAワールドカップ2026は日本時間で6月12日開幕、7月20日決勝の日程で、カナダ・メキシコ・米国の3カ国が共同開催で行われます。出場国は拡大され、過去最多の48チームとなります。
日本はグループFに入っています。同組はオランダ、チュニジア、そして欧州プレーオフパスBを制したスウェーデン。初戦は日本時間6月15日(月)午前5:00キックオフ予定のオランダ戦です。
サッカー日本代表「森保ジャパン」は、日本時間4月1日未明に行われた国際親善試合でイングランド代表と対戦し、1-0で歴史的勝利を収めました。また、日本代表は25年10月14日には東京・味の素スタジアムで行われた国際親善試合で3-2とブラジルに勝利しています。国際親善試合とはいえ、ブラジル、イングランドと優勝候補に勝利したことで、本大会での活躍が期待されます。
なお、ブラジル戦翌日の25年10月15日の日経平均株価は825円35銭上昇、イングランド代表に勝利した嬉しいニュースを受けた4月1日の日経平均株価は2,675円96銭上昇しました。
3月調査の先行き判断で「サッカーワールドカップ」に関しコメントをしたのはまだ2人でしたが、「サッカーワールドカップ」関連先行き判断DIは75.0でした。6月が近づくにつれ「サッカーワールドカップ」関連先行き判断DIの動向と、コメントするウォッチャーの人数がどう変化していくか、注目されます。
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
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