衆院選直前、「景気」はどう動いたか?先行き判断DI“2ヵ月連続上昇”の裏にあった政治への期待【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】

景気の予告信号灯としての身近なデータ(2026年2月10日)

衆院選直前、「景気」はどう動いたか?先行き判断DI“2ヵ月連続上昇”の裏にあった政治への期待【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
(※画像はイメージです/PIXTA)

2026年2月8日に投開票が行われた衆議院選挙。その直前、街角の景況感は「政治」への期待と不安で大きく揺れうごいていました。内閣府が発表した1月の「景気ウォッチャー調査」によると、現状判断DIは寒波や中国からのインバウンド減少が響き足踏み状態となったものの、先行き判断DIは2ヵ月連続で上昇。その背景には、衆院選に向けた「政治の安定」への強い関心があったことが、急増したコメント数からも読み取れます。選挙というビッグイベントを前に、消費者を観察している景気ウォッチャーはなにを懸念し、なにに期待を寄せていたのか。大雪や物価動向、そして開幕したミラノ五輪の影響も含め、エコノミストの宅森昭吉氏がデータを読み解きます。

衆院選への期待がプラス材料に…先行き判断DI2ヵ月連続上昇

現状判断DIは3ヵ月連続低下だが、下げ幅合計が▲0.6ポイントとおおむね横ばい。先行き判断DIは2ヵ月連続上昇、衆議院選挙に期待。現状判断水準DIは3ヵ月ぶり上昇。

 

1月の「景気ウォッチャー調査」で、現状判断DI(季節調整値)は前月差▲0.1ポイントと3ヵ月連続で低下し、47.6となりました。11月差は▲0.2ポイント・12月前月差は▲0.3ポイントそれぞれ小幅低下で、3ヵ月の累計低下幅が▲0.6ポイントと、統計的にはおおむね横這いといっていい低下幅です。10月の現状判断DIは48.2で24年12月以来、10ヵ月ぶりの高い水準でした。

 

2月9日の1月分発表時に季節調整替えが行われ過去の数字が変わりました。2025年の新しい現状判断DIの季節調整値とこれまでの旧・現状判断DIの季節調整値を比べてみると、2月~7月が上方修正、1月と9月~12月が下方修正となりました。

 

一番大幅な変化は4月の1.1ポイントの上方修正でした。春から7月にかけ季節調整のサポートもあり、物価高騰の落ち着き、株価の堅調さなどを背景に、しっかりした数字が出ることが期待されます。

 

出所:内閣府
[図表1]景気ウォッチャー調査:現状判断DI(方向性)季節調整値 出所:内閣府
*2021年12月の58.2が史上最高。2020年4月の8.4が統計史上最低。
※2020年1月~2025年12月の緊急事態宣言またはまん延防止等重点措置発令月(調査対象期間に発令が解除されていた月を除く)・平均35.2(旧35.1)、非発令月…平均47.7(旧47.8)

 

1月の現状判断DIの内訳をみると、家計動向関連DIは、小売関連、飲食関連が上昇。一方で、サービス関連、住宅関連が低下したことから低下しました。企業動向関連DIは、製造業、非製造業ともに上昇したことから上昇しています。雇用関連DIは、低下しました。なお、1月の現状水準判断DI(季節調整値)は47.0で、12月から1.1ポイント、2ヵ月ぶりに上昇しました。25年1月の47.5以来の高い水準です。

 

1月の先行き判断DI(季節調整値)は、前月差0.6ポイント上昇の50.1。雇用関連DIが低下したものの、家計動向関連DIおよび企業動向関連DIが上昇しました。なお、原数値でみると、現状判断DIは前月差3.1ポイント低下の45.4となり、一方、先行き判断DIは前月差2.5ポイント上昇の50.6です。

 

1月の調査結果に示された景気ウォッチャーの見方に関する内閣府の判断は、これまでの「景気は、持ち直している」から「景気は、天候要因の影響がみられるが、持ち直している」に変わりました。また、先行きについては、4ヵ月連続で「価格上昇の影響等を懸念しつつも、持ち直しが続くとみられる」となっています。

 

出所:内閣府
[図表2]景気ウォッチャー調査(2025年12月・26年1月)・季節調整値 出所:内閣府

業種別DI、50超は家電だけ…旅行・交通関連半年ぶりに50割れ

業種別の現状判断DI、旅行・交通関連は6ヵ月ぶりに50割れだが、家電量販店が7ヵ月ぶりに景気判断の分岐点の50を上回る。

 

1月の業種ごとの現状判断DI(原数値)をみると、景気判断の分岐点50を上回る業種が家電量販店だけになりました。家電量販店は52.5と12月の43.1から9.4ポイントと大幅に上昇しています。「寒波の影響により、季節家電が大きく売上を伸ばしている。一方で、冷蔵庫や洗濯機等の生活家電は低迷しており、全体の販売量としては伸び悩んでいる」という北関東の家電量販店・企画担当のコメントがありました。

 

一方、旅行・交通関連は43.3と12月の54.1から10.8ポイント低下しと6ヵ月ぶりに分岐点の50を下回っています。「中国からのインバウンドによる利用が激減している。例年1~2月は需要が減少気味であることも重なり、売上が減少している」という近畿の都市型ホテル・客室担当のコメントがありました。

 

出所:内閣府
[図表3]景気ウォッチャー調査:分野・業種別景気現状判断(方向性/原数値) 出所:内閣府

 

地域別は沖縄が現状・先行きとも強く、地域差鮮明に

地域別の12月では沖縄の現状判断DIが10ヵ月連続で50超。先行き判断DIは53ヵ月連続で50超。

 

地域別にみた1月の現状判断DIでは、沖縄が55.5と12月の52.4から上昇し、10ヵ月連続で景気判断の分岐点50を上回りました。関東のなかに含まれる東京都が50.7で、12月の50.0から上昇し2ヵ月ぶりに50超になりました。

 

また、1月では中国が50.0ちょうどで、その他の地域は50割れに。先行き判断DIでは、沖縄が57.3です。12月から0.5ポイント低下しましたが、21年9月以降53ヵ月連続50超が続いています。

 

出所:内閣府
[図表4]景気ウォッチャー調査:地域別現状判断DI(方向性)季節調整値 出所:内閣府

政治への関心高まる一方、DIは50.0で期待と不安が“半々”

1月「政治」関連先行き判断コメント数は26名、判断はわかれDIは50.0。2月8日の衆議院選挙に関心高く、「衆議院選挙」関連先行き判断コメント数は209名と多く、DIは51.4。

 

1月「衆議院選挙」関連現状判断DIは41.0、コメント数は36名でした。先行き判断DIは51.4でしたが、209名と多くの人がコメントしました。1月「政治」関連先行き判断コメント数は26名、判断はわかれDIは50.0。2024年10月の衆議院選挙で与党が過半数割れとなったときには、先行き判断DIは38.5と低く、選挙前の9月の先行き判断DIは40.3でした。

 

2026年2月衆議院選挙の直前月25日~月末までの調査で、2月初めの「自民が単独過半数の勢い、中道は半減の可能性も」との世論調査が出る前の1月調査で、先行き判断で「政治」に触れた景気ウォッチャーは26名、「政治」関連先行き判断DIは50.0でした。政治の安定を期待する声と、政治不安定による景気へ悪影響を懸念する声に2分されている状況でした。

 

出所:内閣府「景気ウォッチャー調査」より作成
[図表5]25年9月~25年12月調査:「政治」関連コメント集計表 出所:内閣府「景気ウォッチャー調査」より作成
(注)◎「良」、〇「やや良」、□「不変」、▲「やや悪」、×「悪」

大雪は景気にマイナス…気温関連DI4ヵ月ぶりに50を下回る

1月の「気温」関連現状判断DIは40.9と4ヵ月ぶりの40台。「大雪」関連現状判断DIは30.2。

 

1月の「気温」関連現状判断DIは40.9と残暑が厳しかった9月の47.4以来の、判断の分岐点50割れになりました。24名がコメントした1月の「大雪」関連現状判断DIは30.2となり、景況感の足を引っ張ったことがわかります。

 

出所:内閣府データから筆者作成
[図表6]2025年6月~2026年1月の季節関連DI 出所:内閣府データから筆者作成

中国政府の「渡航自粛」響き、インバウンド現状判断2ヵ月連続悪化

1月「外国人orインバウンド」関連判断DI、現状判断は2ヵ月連続50割れ。先行き判断は2ヵ月連続改善。1月は52.7と50超に。

 

1月の「外国人orインバウンド」関連現状判断DIは45.7で12月の49.4から低下し2ヵ月連続の50割れになりました。中国政府が日本への渡航自粛要請を出した影響が顕在化したようです。

 

一方、1月の先行き判断DIは52.7で12月の47.8から4.9ポイント改善しました。2ヵ月連続の上昇です。インバウンド全体でみると、それほどひどいことにはならないという見方が多いのでしょう。コメント数は10月の42人から11月は120人に急増しましたが、12月は68人に低下し、1月は73人でした。

 

「衆議院選挙後は、物価高や円安の動きを注視していく必要があり、特に海外旅行では、中間層の購買に影響を与えると想定している。インバウンドに関しては中国からの訪日が減少するものの、他の国で補い全体として増加傾向は継続すると考えている」という九州の旅行代理店・統括者のコメントがありました。 

 

出所:内閣府「景気ウォッチャー調査」より作成
[図表7]「外国人orインバウンド」関連DIの推移 出所:内閣府「景気ウォッチャー調査」より作成

 

「中国」関連判断DIは、10月ではまだ、現状、先行きともコメント数は1ケタと、通常の状態でしたが、11月になると、現状が45名、先行きが125名と急増しました。12月は、現状が53名と増加しましたが、先行きが68名と急減しました。1月は、現状49名、先行きが44名とともに減少。1月のDIは現状41.3、先行きは44.0とともに12月から上昇しています。

 

出所:内閣府「景気ウォッチャー調査」より作成。
[図表8]25年9月~26年1月調査:「中国」関連コメント集計表 出所:内閣府「景気ウォッチャー調査」より作成。

 

(注)◎「良」、〇「やや良」、□「不変」、▲「やや悪」、×「悪」

物価高は以前景気の“重石”も、ガソリン価格低下はプラス材料

1月「価格or物価」関連現状判断DIは39.7と依然50割れで景況感の足を引っ張る。ガソリン暫定税率廃止で1月の「ガソリン」関連DIは現状、先行きとも50超、景況感の押し上げ要因に。

 

1月の「価格or物価」関連判断DIは、現状が39.7と12月の42.2から、先行き判断DIは44.1で12月の44.5から低下しました。依然50割れで景況感の足を引っ張っています。

 

1月景気ウォッチャー調査の調査期間が始まる1月25日の直前の1月23日に25年12月の全国消費者物価指数が発表されました。変動の大きい生鮮食品を除く総合は前年同月比+2.4%の上昇で、上昇率は3ヵ月ぶりに+3%を下回りました。ガソリンの価格が下がり、上昇率が縮小しました。

 

本来は、物価上昇率が落ち着く傾向がみられるとみて「価格or物価」関連判断DIが改善してもおかしくない状況でした。しかし、NHKのニュースなどでは、2025年の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合は前年同月比+3.1%の高い上昇率だったことを中心に報じていたので、12月の限界的な変化率の鈍化が残念ながらあまり伝わらなかったと思われます。

 

ガソリン暫定税率(25.1円/L)は2025年12月31日に正式に廃止されました。1月の「ガソリン」関連DIは現状56.9、先行き54.8でどちらも50超になり、景況感の押し上げ要因になりました。

 

出所:内閣府「景気ウォッチャー調査」より作成。
[図表9]2023年1月~2026年1月調査:価格・物価関連コメント集計表 出所:内閣府「景気ウォッチャー調査」より作成。

 

(注)◎「良」、〇「やや良」、□「不変」、▲「やや悪」、×「悪」

ミラノ五輪開幕…“期待薄”一転、日本の活躍でムード改善の可能性も

ミラノ・コルティナ冬季オリンピックで、2月9日までで日本は金2個、銀2個、銅3個、計7個のメダルを獲得。大会前の「オリンピック」関連先行き判断DIの下馬評を覆して、日本選手の活躍が景況感にも影響を及ぼすか注目。

 

現在、ミラノ・コルティナ冬季オリンピックが開催されています。25年12月調査の先行き判断で「オリンピック」に関しコメントをしたのは3名、「オリンピック」関連先行き判断DIは41.7でした。1月調査の先行き判断で「オリンピック」に関しコメントをしたのは5名、「オリンピック」関連先行き判断DIは50.0でした。

 

前回の夏のオリンピック・パリ大会のひと月前に公表された2024年5月調査で「オリンピック」のコメントをしたのは10名、「オリンピック」関連先行き判断DIが55.0と50超であったことと比較すると、景気ウォッチャーの期待感は残念ながら小さい状況です。

 

2月9日までに、日本は金2個、銀2個、銅3個、計7個のメダルを獲得しています。今回のオリンピック前の「オリンピック」関連先行き判断DIの下馬評を覆して、日本選手の活躍が、景況感に影響を及ぼすかどうか、注目されるところです。

 

「来月のミラノ・コルティナオリンピックの盛り上がりを期待し、販売促進を強化しているものの、映像関連が厳しい状況である。季節商材のチャンスを逃さないよう注視していきたい」という北関東の家電量販店・営業担当のコメントがありました。

 

出所:内閣府データより作成
[図表10]景気ウォッチャー調査(2026年1月)主な要因別DI 出所:内閣府データより作成

 

※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。

 

 

宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)

三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。

 

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